『劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』感想:2020年に通じる応援歌

(C)2011劇場版「オーズ・ゴーカイ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

今年で〇〇周年という文言を聞くたびに、時の流れの速さに驚きます。ある種の恐怖さえ覚えます。今回扱うのは、放送10周年を迎えた仮面ライダーの映画です。

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作品情報

2010~11年に放送された平成仮面ライダーシリーズ第12作『仮面ライダーオーズ』の劇場版。松平健演じる「暴れん坊将軍」との共闘が、公開当時に注目を集めた。『進撃の巨人』や『ジョジョの奇妙な冒険』のシリーズ構成でも知られる小林靖子が、テレビシリーズに引き続き脚本を担当する。

原作: 石ノ森章太郎
出演: 渡部秀 / 三浦涼介 / 高田里穂 / 岩永洋昭 / 君嶋麻耶 / 松平健 ほか
監督: 柴崎貴行
脚本: 小林靖子
公開: 2011/08/06
上映時間: 65分

あらすじ

ヨーロッパの森で発見された「失われたメダル」の封印が解かれたことで、強力なメダルを作る能力を持った錬金術師ガラが復活。ガラは現在の世界を終わらせ、新たな世界の王=オーズになるため使い魔を使って人間たちの欲望を集め始める。映司らはその影響から江戸時代にタイムスリップしてしまい危機に陥る。

劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル : 作品情報 – 映画.comより引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

ヒーローが日本を元気にする!

今回の劇場版は、テレビ本編の物語とは独立したオリジナルストーリーが展開されます。近年の仮面ライダー映画の多くは、テレビシリーズと密接にリンクした物語が多いため、珍しいと言えます。そのため本編の話を追っていなくても、十分に楽しめる作品になっています。ナレーションや、登場人物による台詞によって、前提となる設定の説明がされるので、一から見てもなんとか分かるレベルには設定の理解が出来ると思います。

オーズの敵であるグリードは、人間の欲望を具現化した「メダル」によって形成されている。主人公の火野映司のバディであるアンクも、グリードの一体に数えられる。序盤で説明されるのは、こういった作品の基本となる設定です。

ここに表れているように、シリーズのテーマは「欲望」。メインライターの小林靖子さんは、登場人物を極限まで追い込んでいく展開を十八番としています。代表作は『仮面ライダー電王』(2007-08)や『侍戦隊シンケンジャー』(2009-10)。『オーズ』もその例に漏れず、映司が欲望の無さに苛まれる終盤の展開は、シリアス色が強いです。しかしながら今回の劇場版の特徴は、最後までコミカルで明るいタッチにあります。札束を得ると引き換えにちょんまげになる人が続出する流れの理不尽さが、この作風を象徴しています。

小林さんにしては異例な作風である要因として、この映画が公開された時期を無視することは出来ません。東日本大震災の発生からまだ5か月しか経っていない、2011年8月に公開されました。子供たちにとっても未だ震災の記憶が生々しいものだったことは、間違いありません。そのような中でヒーローものでシリアスな展開をやられても、気持ちが沈んでしまいますよね。だからこそ震災以降に作られた次作『フォーゼ』は、突き抜けて明るい物語が展開されました。

今作『オーズ』のテレビシリーズにおいても、中盤以降のシナリオが変更されました。バースに変身する伊達明が最後まで生存する展開は、震災以降に持ち込まれたと言及されています。劇場版に至っては、最後まで明るく楽しめて、私たちを元気にしてくれる作品に仕上がっています。本作のキャッチコピー「ヒーローが日本を元気にする!」に、その意気込みが集約されています。今年8月まで放送されていた『ゼロワン』も、未曾有の事態を受けてシナリオの変更を余儀なくされました。世相を反映して作品の方向性を変えたという側面を考えても、奇しくも2020年現在を取り巻く状況と似ている節があると思います。

ここでしか観れないアクション

本作にはアクションの見せ場が、中盤と終盤にそれぞれ一つずつあります。中盤の見せ場は、なんといっても暴れん坊将軍との共闘でしょう。反転した江戸の世界に迷い込んだ映司たち現代の人々は、ガラが召喚した怪人「鵺ヤミー」に襲われます。このとき怪人と映司の戦いを、群衆の陰から見つめる徳田新之助=徳川吉宗を映すカットが挟まれます。彼の表情の重みがすごすぎて、「絶対にこの人は只者ではない」という雰囲気が醸し出されています。

この後オーズは鵺ヤミーと再戦するのですが、苦戦を強いられます。序盤でも一瞬流れる「暴れん坊将軍」のBGMとともに、江戸城をバックにして颯爽と駆ける将軍が満を持して登場します。二人がそろって剣を構えて見栄をきる。それだけで「なにかすごいものを観ている」というような感覚に陥りました。おそらく後にも先にも見れないような、この絵面だけでも本作を観る面白さはあると思います。

そこから流れるように、オーズと将軍それぞれの太刀アクションに移ります。さらにはバイクに乗ったオーズと、白馬に乗る将軍が一緒に怪人を追いかける、世にも奇妙なバイクシーンも見せてくれます。そして将軍がなぜか持っていた力を使って、劇場版オリジナルフォーム「ブラカワニコンボ」に変身して怪人を倒します。この一連のシークエンスは否応にもテンションが上がってしまうとともに、絵面のおかしさから来る面白さがこみ上げてきました。

この戦いに赴くとき、アンクの生命そのものであるタカメダルを使って、映司は変身します。変身音声をスローにしていてタメを作っていたり、映司がメダルを見つめるカットが挿入されていたりする点に、決意に満ちていることが表現されています。テレビ本編の最終回にも近い、熱い場面です。しかしながらコアメダルが靴にはさまっていたという展開が、この後にあります。「さっきの決意も意味がなかったんじゃないか」という冷めた気持ちになったので、要らなかったように思えます。

『オーズ』のアクションの特徴は、メダルの飛び散りでしょう。敵がダメージを与えられたときに、メダルが飛び散ります。人間に置き換えると、これは血しぶきなのです。この描写を含めて、劇場版のアクションは特にCGに力が入っているという印象を受けました。分身を得意とするガタキリバコンボは、CGを多用することもあってテレビではあまり登場しません。ガタキリバが惜しみもなく登場するのは、クライマックスの醍醐味です。さらに沢山のタコカンドロイドの道を渡って、ガラのもとに向かっていく様子も、「テレビでは観れないものを観ている」という感覚にさせてくれます。

現代に戻った終盤の見せ場は、強大な力を得たガラをどのように攻略していくかにあります。メダルを全種類取り込んで巨大な姿になったガラ。グリードたちが力を貸すことで、オーズはピンチを切り抜けます。テレビシリーズではありえない「全フォームそろい踏み」が映し出されます。それぞれが必殺技を繰り出してガラを倒す展開は、今作の一番の見どころといっても過言ではありません。

一斉にコンボチェンジするシーンは、『アベンジャーズ』(2012)のヒーローをぐるりと映す有名なカットをオマージュしています。バースのマスク内演出が『アイアンマン』と似ていることからも、この時期のライダーがMCUの影響を多く受けているのが分かります。

一つ残念なのが、グリードたちが活躍するのがこのシーンだけということです。ここ以外で登場する場面といっても、ガラにやられているシーンくらい。加えて伊達明や後藤慎太郎といったサブライダー勢も、特に見せ場がなかったのは惜しいです。本作がオリジナルストーリーということもあって、本編の物語の核となる部分(紫のメダルや、グリードとしてのアンク)に関してはほとんど触れらません。こういった色々な要素がオミットされているので、批判を受ける理由も分かります。

人と人のつながり

劇場版のゲストキャラとして、映司たちと行動を共にする少年・若葉駿が登場します。江戸時代の子供に、駿が飴を渡すシーンがあります。世界が反転した当初、江戸の人々と現代の人々は対立をしています。大人たちと違った「純粋な」気持ちこそが、人間関係を築くうえで大切ということを意味していると思います。

物語中盤、江戸と現代の人々は、オーズと将軍の戦いに加勢します。ここで彼らがすっかり和解して協力しているので、描写不足感は少しあります。しかしながら戦いのあとに手を取り合う彼らを観ていると、「現実でもこうだったらいいな」と思わざるを得ません。いつでも「みんな家族」と言えるような心を持っていたいものです。

この場面に代表されるように、今回の劇場版で「手」がとても象徴的に用いられています。映司と駿と比奈の3人が手をつなぐカットは、今作でも印象的な場面ではないでしょうか。アンクの意思が宿ったコアメダルを使った変身同様、テレビ最終回のある場面を彷彿とさせます。最終決戦では、母親の「手をとる」ことで、彼女はガラの支配から助け出されます。無事に駿と母親は再会して、二人が手をつないでいるところがアップにされます。

心を別の生命に支配されているという点で、ゲスト親子の関係は、泉比奈と兄・信吾の関係と呼応していると言えます。彼女は直接話すことはできなくても、兄とのつながりを感じていると劇中で話しています。兄の体を乗っ取っているアンクが、比奈の手を(強引に)つなぐラストシーン。ここまで積み重ねられてきた演出は、このシーンのためにあったんだ、と感動しました。映司と3人で手をつないで帰るところでエンドロールに移ります。比奈の手を握る手が、アンクが宿っている右手であるという演出も非常に周到で、最後まで見逃せません。

エンドロールで流れるマツケンサンバの新作『手をつなごう〜マツケン×仮面ライダーサンバ〜』。物語だけでなく主題歌でも、「人と人のつながり」が強調されています。「手をつなごう」こそ、2011年当時の観客へのこれ以上ない直接的なメッセージでした。そしてこのメッセージは、2020年を生きる私たちに図らずも通ずるものがあります。先が見えない状況だからこそ、他人同士争うのではなく、手を取り合うべきなのです。そういった当たり前のことを教えてくれる素晴らしい映画です。

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最後に

ちなみにこの映画には、若き日の福士蒼汰さんがちらっと客演します。次作のライダー=フォーゼに変身する如月弦太朗を演じている彼を観ることが出来ます。こういった点も含めて、色々な魅力があるおすすめな作品です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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