ドラマ『岸辺露伴は動かない(第1期)』感想:奇妙な実写化を成立させたバランス感

(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C)NHK・PICS

続編が作られるのも頷ける見事な実写化。

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作品情報

1986年から『週刊少年ジャンプ』で連載された『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ漫画の実写ドラマ化。第4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する漫画家・岸辺露伴の奇妙な日常を描く。高橋一生と飯豊まりえのほか、柴崎楓雅、森山未來、瀧内公美らが各話ゲストで出演する。

原作: 荒木飛呂彦 / 北國ばらっど
出演: 高橋一生 / 飯豊まりえ / 中村倫也 ほか
演出: 渡辺一貴
脚本: 小林靖子
放送期間: 2020/12/28 – 12/30
話数: 3話

あらすじ

相手を「本」にしてその生い立ちや秘密を知り、書き込んで指示を与えることができる“ヘブンズドアー”。この特殊な能力を持つ漫画家の岸辺露伴が遭遇する奇妙な事件に立ち向かう。ヘブンズ・ドアー! 今、心の扉は開かれる――

NHKオンデマンド 岸辺露伴は動かないより引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

岸辺露伴の初実写化

1992~95年に『週刊少年ジャンプ』で連載された『ジョジョの奇妙な冒険』第4部「ダイヤモンドは砕けない」。その中に登場する岸辺露伴は、第4部の主要キャラクターの一人です。作品の舞台である杜王町に暮らしながら、劇中で人気の漫画『ピンクダークの少年』を連載していました。

その一方で彼は、スタンドと呼ばれる特殊能力を持っていました。スタンドと自身の過去との繋がりを思い出したのをきっかけに、同じくスタンド使いである高校生・東方仗助らと協力。凶悪殺人鬼との熾烈な戦いに身を投じていきます。

露伴の性格を一言で表すと「変人」。基本的に人間が嫌いで、他人との関わりを極力遮断している。なので漫画のアシスタントを一人も雇わない。他人を見下している自己中心的な性格の持ち主。そんな彼から発せられる独特な台詞の数々は、ジョジョを象徴しています。

使用するスタンドの名は、ヘブンズ・ドアー。その能力は、人の記憶を本にして自由に読めるというもの。またその本に文字を書き加えることで、相手を意図通りに動かせるといった、チートさも持ち合わせています。

どうすれば自分の漫画をもっと読者に読んでもらえるのか。露伴は常にそればかりを考えています。ヘブンズ・ドアーを使うのも、漫画のクオリティ向上のため。リアリティのあるストーリーを創造するために、人が実際にした経験を物語として読んでいます。

一見すれば変人だが、生き方にはしっかりと芯が通っている。その唯一無二なキャラクター性で、ファンからは人気を集めています。ねとらぼで行われた第4部のキャラクターの中での人気投票では、1位を獲得していました。

【ジョジョの奇妙な冒険】4部の人気キャラTOP34! 第1位は「岸辺露伴」に決定!【2021年最新投票結果】(1/2) | ねとらぼ調査隊
 2021年2月28日から3月13日まで、ねとらぼ調査隊では「ジョジョ第4部、あなたが一番好きなキャラクターは?」というアンケートを実施していました。【ジョジョの奇妙な冒険】あなたが一番好きなジョジョ第4部のキャラクターは?【人気投票実施中】 | ねとらぼ調査隊 荒木飛呂彦さんの人気コミックス「ジョジョの奇妙…

その人気ぶりが影響してか、連載終了後の1997年に彼の日常を描いたスピンオフ『岸辺露伴は動かない』が製作。後にシリーズ化され、不定期に新規エピソードが発表されています。現在までに単行本2巻と短編小説集が発売されており、アニメ化もされました。

今作はそのスピンオフを原作とした実写ドラマです。

ジョジョの実写化といえば、このドラマ版が放送されるわずか3年前に実写映画が公開されました。三池崇史さんが監督、山﨑賢人さんが主演した『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017)です。

スタンド同士のアクションシーンなど良い面はあったものの、ストーリーの鈍重さやビジュアルの不自然さから、否定的な感想が多く見受けられました。

この映画のマイナスな印象が記憶に新しい中で発表された、今回の実写化。そのためか放送前から作品の出来を不安視する声が多くありました。では蓋を開けた結果は、どのようなものだったのでしょうか。

適材適所の座組

先述の実写映画の影響もあり、放送前からネガティブな意見が寄せられていた今作。ただしそれと同時に、本作を期待する声も多く見られました。その理由の多くは、同時に発表された製作スタッフの布陣にあることが、当時のTwitterの反応から伺えます。

脚本を執筆するのは、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(2012-)のシリーズ構成を担当している小林靖子さん。この他にも『進撃の巨人』や『賭ケグルイ』をはじめ、名だたるアニメシリーズのシリーズ構成・メインライターを担当。平成仮面ライダーやスーパー戦隊の脚本家としても知られています。

演出を務める渡辺一貴さんは、『龍馬伝』(2010)や『おんな城主 直虎』(2017)といった大河ドラマの演出をいくつも歴任。連続テレビ小説の経験もあり、NHKらしいドラマを作り続けられてきました。そして「筋金入りで、知識が半端な」いほどに、ジョジョの愛読者であったそう(※1)。

※1:「自分の隣に露伴がいたら、どんな世界になるのか?」プロデューサー・土橋圭介に聞く『岸辺露伴は動かない』実写ドラマ化のきっかけ | 超!アニメディアより引用

アニメ版ジョジョに既に携わる名脚本家と、シリーズを愛するNHKドラマの名手。確かな手腕をもったお二方の存在が、ファンの期待を高めたのは明らかです。

全部で3つのエピソードに分かれている、ドラマ版『岸辺露伴は動かない』。それぞれは独立した物語でありながら、全体で一本の筋が通っているという構成になっています。

  • 第1話「富豪村」

単行本1巻に収録されたエピソード。マナーに厳しい主がいる別荘地を訪れる露伴と、担当編集者・泉京香。マナー違反によって危険に晒された露伴が、ヘブンズ・ドアーで機転を利かし、無事に村から脱出する。

ヘブンズ・ドアーのお披露目となる初回。人の顔の一部を本のように変化させ、パラパラとめくって中身を読む。その奇怪な能力が、巧みな美術により完全に再現されています。「実際にあるわけはないが、どこかにあってもおかしくない。」そう思わせるリアルな造形は、グロテスクにも感じられました。

  • 第2話「くしゃがら」

『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』(2018)に収録されたエピソード。口に出してはいけない言葉「くしゃがら」の謎を追う。露伴はまたもヘブンズ・ドアーを駆使して、同僚の漫画家を生命の危機から救い出す。

人間の意識が徐々にくしゃがらに支配されることの恐怖や、得体の知れない「袋とじ」の気持ち悪さが、忠実に表現されていました。

  • 第3話「D・N・A」

単行本2巻に収録されたエピソード。「こんにちは」を「わちにんこ」と話すなど、逆さ言葉しか口にしない少女が、露伴と泉の前に現れる。彼女の生い立ちを追うにつれ、泉の彼氏である平井太郎との奇妙な関係が明らかになっていく。

この話で特徴的なのが、ヘブンズ・ドアーが顔だけでなく、人間自体を本に変える場面。原作や前の2話には無かった、この回だけの演出です。全3話を通した物語の結末となる、三位一体的に繋がる飛び出す絵本。一本の筋を通すよう改変したからこそ生まれた、非常に印象的な表現でした。

上記のように今作で描かれるのは、突飛でファンタジックな人物や現象ばかり。しかしそれを描く演出はリアリスティックで、地に足が着いています。この絶妙なバランス感が、今回の実写化のポイントと言えます。これにより原作の「現実に潜む奇妙」的な世界観が、上手く具現化されていました。

なぜ岸辺露伴なのか

脚本や演出以外に作品の完成度を高めている理由として、ジョジョ本編ではなく、スピンオフである『岸部露伴は動かない』を題材に選んでいる点も挙げられます。

スタンド同士の派手なバトルシーンは、シリーズを通した大きな魅力の一つです。しかしこれを実写化するには、単発テレビドラマの予算では厳しいでしょう。それこそ2017年の映画のように、多額の予算を組んでCGを使わないと再現は難しいと思われます。

打って変わってスピンオフには、スタンド同士の戦いはありません。そのストーリーは心理戦の要素が色濃く、ミステリードラマのようです。こちらが原作であれば、「それならテレビ向きだし勝算があるかもと思っ」たと、土橋圭介プロデューサーは語ります(※1)。

その予測は見事に的中しており、出来上がったものは『世にも奇妙な物語』にも似た、不思議な雰囲気をまとっています。

ドラマ版にはスタンドという単語は登場せず、露伴は自身の能力を「天からのギフト」と呼んでいます。そしてヘブンズ・ドアーの姿も一切映し出されません。この画期性がミステリーやホラー的な様相をさらに強めていました。ちなみに漫画やアニメでは、こういったデザインをしたスタンドです。

役者陣の演技も素晴らしい。やはり特筆すべきは、主人公・露伴を演じる高橋一生さんの見事な憑依ぶり。ご本人のミステリアスな雰囲気が相まって、露伴のおかしな言動の数々が、思いのほか自然と飲み込めました。また彼の偏屈さは『カルテット』(2017)で演じた家森にも似ています。

露伴と同じく3話通して登場するのが、彼の担当である女性編集者・泉京香。原作ではゲストキャラでしたが、一本の筋を通した物語にするため今回はレギュラーキャラになっています。ジョジョらしさと「実際にいそう」感の間をとった絶妙さが感じられました。

彼ら登場人物が身にまとう衣装に関しても、原作のデザインを活かしつつ、現実世界と上手くなじませています。ジョジョ的な癖の強さを残しながらも、そこまで違和感を抱かせないバランス感です。

最後に付け加えると、ジョジョの世界観は字幕にも表れていました。「ァ」や「ッ」といった漫画からトレースした語尾や、独特なルビ振りが所々に使われています。普通のドラマではまず見ることのない字幕。世界観を再現するための工夫は、こういった細部にも宿っているのでした。

脚本や演出、美術、そしてキャスティング。それらが絶妙なバランスによって絡み合ったことで成し遂げられた、奇跡の実写ドラマでした。

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最後に

年末に放送される新作エピソードも楽しみです。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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