内田有紀版『時をかける少女』感想:三角関係を描く本格恋愛劇

(C)1994 共同テレビ・フジテレビ

『時をかける少女』映像化の第4弾です。

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作品情報

1965年に発表された筒井康隆による同名小説を原作とした、内田有紀主演の連続ドラマ。フジテレビ系列「ボクたちのドラマシリーズ」枠で1994年に放送された。2時間に再編集された特別編集版のみソフト化されている。

原作: 筒井康隆『時をかける少女』
出演: 内田有紀 / 袴田吉彦 / 河相我聞 ほか
演出: 落合正幸 / 佐藤祐市
脚本: 君塚良一
放送期間: 1994/02/19 – 03/19
話数: 5話

あらすじ

高校2年生の芳山和子(内田有紀)は土曜日の放課後、実験室でラベンダーの香りの不思議な薬品のにおいを嗅いで意識を失ってしまう。その次の日から、和子は時間を行き来する能力を得てしまう。突然のことに戸惑う和子。幼なじみの吾朗(河相我聞)は信じてくれない様子だが、クラスメートの深町(袴田吉彦)は興味深く和子を見つめていた……。

VHS『時をかける少女 Special Edition』パッケージより引用
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レビュー

このレビューは内田有紀版をはじめとした、歴代『時をかける少女』映像化作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

色々と貴重なドラマ

既に4度目の映像化となるSF小説『時をかける少女』。それまで原田知世さんや南野陽子さんといった方々が、主人公に抜擢されてきました。時のアイドルたちが主演してきたことで、そのタイトルの知名度は確固なものになっていたでしょう。

1992年からフジテレビ系列に新たに設立された「ボクたちのドラマシリーズ」。この枠で放送される作品は10代の少年少女をターゲットにしており、観月ありささんや松雪泰子さんなど、旬の若手女性タレントがキャスティングされています。今回の時かけは、このシリーズの一環で製作されました。

連続ドラマ初主演となる内田有紀さんが、今作の主人公・芳山和子を演じます。ドラマが放送された同年の10月には歌手デビューを果たし、デビューシングルでオリコン初登場1位を獲得。まさにアイドル・俳優としての地位を確立していく最中にあったと言えます。

以降、現代にいたるまで一線で活躍を続ける内田さんですが、他にも現在まで映像作品に出演し続ける俳優が出演しています。袴田吉彦さんや河相我聞さん、菅野美穂さん、そして森本レオさん。脇役にいたるまで豪華なキャストが共演しており、そういった方々の若い頃の姿を観られます。

さらにはSUPER MONKEY’S時代の安室奈美恵さんが和子の妹役で、原作者の筒井康隆さんが住職役で出演していました。他のドラマでは中々見られないレアなキャストは、見どころの一つです。

そんな貴重な作品でありながら、残念なことに本作はVHSでしか発売されていません。しかもソフトに収録されているのは全5話ではなく、未放送カットを入れて2時間に再編集されたスペシャルエディション。

本放送と同じ状態を観るためには、テレビの再放送に頼るしかないのが現状で、全編を視聴する難易度は高いです。これから書く私の感想も、VHSのバージョンを観てのものです。

この特別編集版からして、ストーリーの流れは原作にかなり忠実に進んでいきます。舞台は羽田空港の近くのとある高校。そこに通う2年生の芳山和子は、理科室の掃除中に何かが割れる音を聞く。準備室に入った彼女は床にこぼれたピンクの液体を見つけ、そこに漂うラベンダーの匂いの煙を嗅いで意識を失う。

保健室で目を覚ました和子は、その日行われていたバスケ部の試合に無理を言って出場する。しかし本調子ではないため、ミスを連発した末、試合中に倒れてしまう。

週が明けた月曜日、家では将来について親に催促され、部活では調子が悪く試合に出られず、和子は浮かない気持ちで一日を過ごした。そんな中、寝ているとき突然、地震に襲われる。さらに吾朗の実家が営む風呂屋で火事が起きる。

火事の現場で和子の頭上に何かが落ちてきた瞬間、彼女は目を覚ます。昨日と全く同じ会話、全く同じ風景。彼女は既に経験した一日をもう一度繰り返していた。この不思議な体験を、同級生の深町一夫と浅倉吾朗に打ち明ける。このタイムリープをきっかけにして、三人の関係が動き出す。

濃密な三角関係ものへ

全体の流れは原作に沿っていながら、恋愛要素の濃密さが、原作や過去の映像化と大きく異なる点です。脚本を執筆したのは、君塚良一さん。『世にも奇妙な物語』シリーズや、当時一大ブームを巻き起こしたドラマ『ずっとあなたが好きだった』(1992)の脚本を担当しています。

和子を巡る人間模様にフォーカスを当て、思春期の恋心の動きを丁寧に描いている本作。劇中に漂うロマンティックなムードは、1990年代ドラマの流行の一つだったのかなと推測します。しかしながら恋愛模様が丁寧すぎるがゆえに、全体のテンポは少し遅い印象があるのは否めません。

また恋愛要素が強いと感じる要因に関しては、私が2時間の特別編集版を視聴したからという理由は無視できません。このバージョンはおよそ5時間ある内容から、メインとなるラブストーリーを主軸に編集した内容と思います。そのためメインでない他の要素が削られているでしょうし、そう感じるのは仕方なくもあります。

とはいえ恋愛もの、とりわけ「三角関係もの」としての色合いが、かなり濃いのが特徴的な映像化に仕上がっています。

中学3年の夏休み、変な男たちに絡まれそうになっていた和子は、当時名前すら知らなかった深町に助けられる。高校に入学した二人は「偶然の再会」を果たす。こういった過去の記憶が鍵となるあたりは、時かけの原点とも言える原田知世版をオマージュしているように思われます。確かにそういった演出も見受けられました。

そんな思い出を持っているため、物語序盤の時点で既に、和子は深町に想いを寄せています。一方で吾朗は、「ガキの頃からの付き合い」である和子に片想い中。軽口を叩き合う関係でありながら、そこに恋愛感情があるのは誰が見ても明らか。こちらも原田版の吾朗と同様に、不器用さがにじみ出ています。

自身のタイムリープ能力に不安な和子は、土曜日の放課後の理科室に行き、その場にいた人物に会いに行くことに。自分の正体に葛藤して、彼女を突き放す深町。それを不審に思った吾朗は、彼を呼び出し口喧嘩になる。やがて掴み合いにまで発展。「ザ・三角関係」と言えるトレンディな展開でした。

深町は自身が未来から来たことを和子に打ち明ける。架空の歴史を植え付けられた事実を受け入れたくない彼女は、思い出を傷つけられたショックでその場から逃げ出してしまう。しかしその後ラベンダーを見たとき、深町との記憶がフラッシュバックするのだった。

このように全編で繰り広げられる三人の恋愛模様は、原作からの強いアレンジです。それに対して小説の持っていたSF要素は、あくまで舞台設定として使われるにとどまりました。ここから「時かけ」の物語が、いかに自由自在でジャンルレスなものへと変化しているかが伺えます。

確かな脚本力

完成させた薬を使って元の時代へと戻る深町は、吾朗や両親に別れを告げる。この時代で人の温かさに沢山触れた深町は、別れを惜しむ。彼と楽しそうに会話する両親の姿が序盤に描かれていたので、両親との別れのシーンはより寂しく感じられました。

彼との別れ際に和子は、白馬の王子様を望む台詞を発する。

「いつかだれか素晴らしい人が私の前に現れるの。私はその人を知ってるの。そしてその人も私のことを…。会えるのね、その素晴らしい人に。いつか、どこかで。」

目を覚ますと泣いている和子。しかしその理由はすっかり覚えていない。

深町が去った世界で、登場人物たちが楽しく生きている様子が映し出されるラストには、切なさが溢れていました。そして数年が経ち、社会人になった和子と吾朗の関係が少し進展したようなことが示唆され、作品は幕を閉じます。

もちろんドラマの物語全てが、ラブストーリーなのではありません。特別編集版には、本編のいくつかのサブエピソードが随所に挟み込まれていました。各エピソードがしっかりと、メインとなる三人の人間関係の変化に繋がっていく脚本は素晴らしいと思います。

印象的なのは、和子の妹・美代子の高校受験にまつわる話。行きたかった高校に合格できなかったイライラから、姉妹は言い合いに。「あのときだって、助けてくれなかったじゃない」と言われた和子はハッとする。

どうやら二人の間には過去に確執があるよう。幼い頃に遊んでいたとき、川で溺れそうになった美代子を、和子は立ち尽くしてただ見つめることしかできなかった。二人の関係がどういった着地をするかにも注目です。

加えて福島先生の不倫についても語られます。重い病気を患い入院する妻のことを、「たぶん家に戻ってこれない」と言う先生。それを聞いた生徒たちは「別れる未来が分かっていても、人を好きになるのか」について考える。自身の境遇と重なる深町の心情にフォーカスが当たる場面でした。

こうした美代子や福島先生に関する話は、VHSのバージョンではさらっと触れられるだけでした。おそらく本放送では、このあたりがもっと深く掘り下げられており、物語により深みを感じられたでしょう。願わくば本放送版を観てみたい。そう思わされる貴重なソフトでした。

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最後に

社会人になった和子が着ているスーツのデザインであったり、DREAMS COME TRUEのカセットであったり、作風だけでなく映像からも1990年代を想起させる作品です。当時を知る人も知らない人も、ぜひ観ていただきたいです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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