ドラマ『パパとムスメの7日間(2007)』感想:入れ替わりが育む家族愛

(C)TBS (C)五十嵐貴久/朝日新聞社

女子高生を演じる舘ひろしさんを見られる稀有なドラマ。

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作品情報

2006年に発表された五十嵐貴久による同名小説を原作とした連続ドラマ。TBS系列「日曜劇場」枠で2007年に放送された。舘ひろし演じるサラリーマンの父親と、新垣結衣演じる女子高生の娘。人格が入れ替わってしまった2人のドタバタな日常をコミカルに描く。

原作: 五十嵐貴久『パパとムスメの7日間』
出演: 舘ひろし / 新垣結衣 / 加藤成亮 / 佐田真由美 / 麻生祐未 ほか
演出: 高成麻畝子 / 吉田健 / 那須田淳
脚本: 荒井修子 / 渡辺千穂 / 徳永友一
放送期間: 2007/07/01 – 08/19
話数: 7話

あらすじ

恭一郎(舘ひろし)と高校2年生の娘・小梅(新垣結衣)はある日、急ブレーキをかけた電車から投げ出される。病院で目を覚ました恭一郎、なぜか隣には恭一郎の姿があった。

パパとムスメの7日間|ドラマ・時代劇|TBSチャンネル – TBSより引用
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レビュー

このレビューは小説およびドラマ『パパとムスメの7日間』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

家族向けの入れ替わりコメディ

2000年代中頃、テレビドラマ界は学園ドラマ全盛期を迎えていました。『花より男子』(2005)や『野ブタ。をプロデュース』(2005)、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(2007)。これらに代表されるように、学校を舞台にした作品が次々とヒットしたこの時期は、学園ドラマの「第三次黄金期」と言われています。

『金八先生』から『花より男子』『花のち晴れ』まで―学園ドラマの歴史を辿る | PlusParavi(プラスパラビ)
元祖・学園ドラマと第一次黄金期今年1月、俳優の夏木陽介さんが腎細胞がんのため亡くなられた。享年81。2009年に軽い脳梗塞を起こすなど、この10年ほどは病との付き合いが続いたという。改めてご冥福をお祈りします。</p

2007年に製作された『パパとムスメの7日間』もまた、黄金期の中の1作品として数えられます。一般的なワンクールの連ドラより少ない全7話構成。その理由は同年8月末から世界陸上の中継が、当初から予定されていたためです。

妻と娘をこよなく愛する中年の父親と、そんな父親をウザく思う思春期の娘は、とある事故をきっかけに心と身体が入れ替わってしまう。このあらすじから明らかなように、今作は学園ものであると同時に、「入れ替わりもの」に分類されます。

入れ替わりものは、古くから様々な作品が作り続けられてきました。中でも代表的なのは、劇中の台詞にも出てくる映画『転校生』(1982)。原作者の五十嵐さんは「入れ替わりモノのバイブル的な映画ですから、もう7、8回は観ていると思います。その影響は確実にあって、言い出したらキリがない」と、同作からの影響を公言しています(※1)。

※1:わたしたち、入れ替わってる?の名作『転校生』には勝てない…作家五十嵐貴久がホンネ|シネマトゥデイより引用

有象無象あるこのジャンルの中で、本作の特筆すべき特徴は、おじさんのパパと女子高生のムスメの人格が入れ替わる点。男女とはいえ親子なので、セクハラ描写などのいやらしさは一切ありません。加えてコメディタッチであるため、ファミリー向けコメディのお手本と言えます。

ムスメこと川原小梅は、サッカー部の健太先輩に想いを寄せながら、楽しい青春時代を過ごしていた。キラキラした彼女の高校生活を描いた場面から物語は始まる。先輩との初デートに漕ぎ着け、次の週末を心待ちにしていた。

パパの恭一郎は、大手化粧品会社の中間管理職。出世ルートから外れた彼は、厄介な新プロジェクトのリーダーを押し付けられていた。重要な役員会議を来週に控え、プロジェクトは大詰めの時期を迎えていた。

小梅の口癖は「パパのせいで、いい気分台無し。」恭一郎を一方的に避けていた彼女は、2年間ほとんど会話をしてこなかった。そんな中、一緒に乗っていた電車が脱線事故を起こす。病院に運ばれた2人が目を覚ますと、互いの人格が入れ替わっていた。

生きることと愛することの尊さ

本編では2人が互いの日常生活を、どのように切り抜けていくかが描かれていきます。トイレやお風呂に始まり、何気ない仕草や話し方といった些細なことにも、常にハラハラが付きまとう。この展開には入れ替わりコメディの定番的な面白さがあります。

さらに小梅(身体は恭一郎)には、「御前会議」と呼ばれる役員会議に向け、無理難題が次々と降りかかる。責任逃れする大人たちに痺れを切らした彼女は、会議で正直な意見を述べてしまう。その意見を元に始まった新プランの計画にあたっても、問題が山積みだった。

しかし彼女の若者ならではの大胆さは、窓際と揶揄されていたメンバーたちを奮い立たせます。チーム一丸となった彼らが、会社に一矢報いる展開は少年漫画的であり、テンションが上がりました。

対して恭一郎(身体は小梅)には、期末テストが待ち受けていた。自分の頭脳を過信していた彼は、小梅の仕事のサポートを優先していたために、試験結果はボロボロ。三者面談の場を設けられてしまう。

片方のピンチのときには、もう片方が頑張る。そういったやり方で何度も困難を乗り越えるも、青春を楽しみたい小梅は元に戻りたい気持ちを強めていた。その様子を見た恭一郎も、娘のために元に戻る方法を探す。そして入れ替わりのカギが、事故の前に車内で食べた桃だと突き止める。

最終話冒頭で2人の人格は無事に戻り、その後はそれぞれの元の日常が語られます。原作同様に小梅と健太先輩は付き合い始めます。恭一郎は部長に昇進。中嶋と西野さんは付き合うことに。全方面的にハッピーエンドな、ほっこりしたエンディングを迎えます。

入れ替わりを通して、仕事の大変さや親心を痛感した小梅と、学校生活の大変さや子供心を理解した恭一郎。互いの生活を経験し、その大変さを身に染みて感じたことによる各々の成長が伺えました。

父親と娘は、会社と高校という全く異なる世界に生きています。住人はその世界ごとに存在するルールに従って、生きていく必要があるのです。一人ひとりがそれぞれの世界で「生きていく」ことの大変さや尊さが描かれているように思いました。

第1話の時点では、小梅を信用しきれない恭一郎が、彼女に対して頑固な態度をとっていました。ただし妻や娘との会話を通して、家族への信頼こそが重要であると知ります。

言わずもがな今作のテーマは家族愛。ガンで入院していた中嶋の父親のエピソードや、恭一郎が毎年妻に渡しているストロベリー・フィールドからも、家族という存在の大切さが伝わってきました。

この後2017年に韓国で、2018年にベトナムでも映画化されており、海外にも受け入れられる作品のテーマの普遍性が見受けられます。

複数人格を宿す演技の妙

このドラマが優れているのは、第一にコメディとして笑える点。こういった入れ替わりものでは、複数の人格を演じる2人の演技が非常に重要になってきますが、随所に挟まれる台詞や彼らの表情が軽快で面白かったです。

小梅を演じる新垣結衣さんは、とにかく可愛らしい。当時ポッキーのCMに出演しており、まさにブレイク中のタイミングだったと思われます。作中でヒールやスカートに慣れない演技や、さり気ない中年っぽい言葉遣いを巧みに使いこなしており、実在感がありました。

ちなみに同じくTBS系の『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)で、新垣さんは9年ぶりに同じセーラー服を着用していました。違和感が全くないのが凄い。

恭一郎役の舘ひろしさんも、女子高生らしい表情や手の動きがとにかく可愛らしい。外見とかけ離れた女子高生を演じているとともに、そもそも当時の女子高生の言葉や文化が独創的なのも相まって、とても面白いです。

基本は軽いノリで会話しているものの、会議などキメるべきシーンではしっかりキメる。代表作『あぶない刑事』を彷彿とさせる、ダンディさを見せるシーンもありました。

両者とも仕草や話し方などが徹底されており、実際あり得ないのに、本当に入れ替わっているように自然に思えるのが何より素晴らしいです。これに関しては、2人の持っている携帯やメール本文の違いなど、演出面でも細部までこだわっているからでしょう。

ガラケーや携帯へのデコレーション、そしてメールの書き方からは、15年という時代の変化を実感しました。また顧客満足度よりブランドイメージを重要視する会社の社風は、放送当時からしても、古風に考えられます。

他にも小梅の母親であり恭一郎の妻である理恵子を演じる、麻生祐未さんの演技も素晴らしく、笑顔と真顔のコントラストが怖かったです。また恭一郎を誘惑する敵役にあたる、西野さんからは妖艶さが感じられました。

基本的に本作は原作に忠実に話が進みますが、西野さんに関しては、彼女の狂気がかなりマイルドに改変されています。劇中では恭一郎を離婚させるように仕向けたり、伝説の桃を持って帰ろうとしたりしていた彼女。小説では恭一郎への想いの強さゆえに、小梅に対しても当たりが強くなっていました。おそらく家族向けのドラマ化ゆえの改変でしょう。

物語のキーアイテムとなる桃も同様に、ドラマオリジナルの設定です。「食べた人間のどちらかが命がけで守りたいと思った」ことが、入れ替わりの原因とされていました。ここにも本作への家族愛のこだわりが表れています。

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最後に

明るく気軽に楽しめるホームドラマの傑作。15年ぶりの再ドラマ化に際して、TVerやParaviなどの様々な配信サービスにて、期間限定で配信されています。この機会にぜひ観ていただきたいです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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