『ルパン三世VSキャッツ・アイ』感想:懐かしさと新しさを求めた挑戦

(C)モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世VSキャッツ・アイ製作委員会

二兎を追う者は一兎をも得ず。

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作品情報

『ルパン三世』アニメ化50周年と『キャッツ・アイ』原作40周年を記念したコラボ作品。1980年代を舞台に、三枚の絵画をめぐって泥棒たちが戦いを繰り広げる。両作に携わるトムス・エンタテインメント制作で、Amazon Prime Videoにて世界独占配信中。

原作: モンキー・パンチ『ルパン三世』 / 北条司『キャッツ・アイ』
出演: 栗田貫一 / 大塚明夫 / 浪川大輔 / 戸田恵子 / 深見梨加 / 坂本千夏 ほか
監督: 静野孔文 / 瀬下寛之
脚本: 葛原秀治
配信: 2023/01/27
上映時間: 92分

あらすじ

ターゲットは、キャッツアイの父が遺した「三枚の絵」。
共に絵を狙うルパンとキャッツの“夢の泥棒対決”。
それぞれの魅力的なキャラクターたちが入り乱れ、
物語はやがて、絵に隠された驚くべき“秘密”へと繋がっていく……。

アニメ『ルパン三世VSキャッツ・アイ』公式サイトより引用
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レビュー

このレビューは『ルパン三世VSキャッツ・アイ』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

挑戦を続けるルパン

1971年にテレビアニメの放送を開始してから50年以上、様々な映像作品を世に送り出し続ける長寿シリーズ『ルパン三世』。特に2010年代以降は、それぞれの作品で画期的なチャレンジをしており、多種多様な『ルパン三世』が作り出されています。

2015年から再開したテレビシリーズ。PART 5やPART 6では、シリーズ初参加の作家や脚本家が起用されました。これまでテレビスペシャルや劇場版で培われてきた世界観に広がりを持たせ、奥深いものにしています。

一方で原点回帰を目指しているのが、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(2012)から派生した『LUPIN THE IIIRD』シリーズ。小池健さんによる劇画調のキャラクターデザインと、ハードボイルドな作風で人気を博し、現在までに3本の映画が製作されています。

そして2019年には、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(2019)の山崎貴監督による3DCG映画『ルパン三世 THE FIRST』が公開。昨年にはDMM TVで、少年時代のルパンを主人公にしたアニメシリーズ『LUPIN ZERO』(2022-23)が配信を開始しました。

全編セルルックCGで描かれた今作も、数ある挑戦の一つでしょう。これは『ルパン三世 THE FIRST』のCGとは異なり、3DCGを手描きアニメーションのように表現する手法。『シドニアの騎士』(2014)や『GODZILLA』シリーズ(2017-18)を担当した静野孔文さんと瀬下寛之さんが監督していることからも、CG前提で進められた企画だと考えられます。

セルルックCGといえば、映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)が大ヒット中。原作者の圧倒的画力のもと、手に汗握るバスケの試合映像を見事に作り上げました。また同じくセルルックCGである『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』も同年に製作されており、現代のアニメ映画の一つの潮流と言えます。

さらに特徴的なのが、キャラクターデザイン。キャッツアイを『ルパン三世』の世界に合わせるため、デザインが一新されました。今回初めて『ルパン三世』に携わったプロデューサーの石山桂一さんによると、「新しい『ルパン』や『キャッツ』を作ってほしい」という意味も込めたのだそう(※1)。

※1:『ルパン三世VSキャッツ・アイ』プロデューサー石山桂一氏インタビューより引用

ただ今回のキャラデザに対する違和感は、どうしても拭い切れません。人物の動きや表情がやや硬く、肌の質感にも不自然さが感じられました。はっきりとした黒い輪郭線がそうした違和感を強調するとともに、双方の世界観から連想されるような重厚感を失しています。

フル3DCGを採用した挑戦自体は、素晴らしいと思います。しかし近年は、高クオリティなCGアニメーションが、本作と同様に手軽に観られるようになりました。多彩なアニメ表現で多元世界を描き分けた『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)などが、既に同じ土台の上に乗っているのです。

そういった難しい時代ではあるものの、コスト面の問題や配信タイミングを考慮しても、どうしても見劣りしてしまうアニメーション表現でした。

ルパン三世 featuring キャッツ・アイ

1980年代に一世を風靡した『ルパン三世』と『キャッツ・アイ』。双方のキャラクターの時を超えた初共演が、ストーリーの目玉になっています。

北条司さんの漫画『キャッツ・アイ』は、1981~1984年に『週刊少年ジャンプ』で連載されました。来生泪、瞳、愛の三姉妹が素性を隠しながら、怪盗集団「キャッツアイ」として美術品を狙う物語。彼女たちと敵対する刑事の内海俊夫と瞳のラブコメの要素もありました。

1983~1985年に放送されたテレビアニメ以降、長らくアニメ作品は製作されていませんでした。原作者が同じ『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』(2019)へのゲスト出演がきっかけとなり、このたび数十年ぶりの新作が作られました。そのため今回、初めて『キャッツ・アイ』に触れた人も少なくないと思われます。

『ルパン三世』を中学生の時から読んでいた北条さんは、モンキー・パンチさんをリスペクトしています。それもあってか基本的なストーリーは、『ルパン三世』側がメイン。彼らがキャッツアイと「VS」するのは序盤のみで、その後は行動を共にし、真の敵と対峙する流れになっています。

1981年の東京、来生三姉妹の父・ハインツが遺した三枚の絵を、ルパン一味とキャッツアイがそれぞれ盗み出すところから物語は動き出す。高層ビルと海上を舞台に、冒頭から展開されるこのアクションシーンは迫力があり、作品の世界に一気に引き込まれました。

その後ルパンは、キャッツアイが盗んだ絵を奪い取る。彼は駆け出し時代にハインツに助けられた過去があり、二人は互いに相手の仕事を手伝う仲間だったことが明かされます。ルパンは絵画を狙う敵組織「ファーデン」の攻撃から、ハインツの娘たちを守るために行動していたのです。

それでも真相を知りたい彼女たちは、ルパンたちと一緒に行動します。プロの泥棒であるルパン一味と、別の仕事をしながら怪盗をする、いわばアマチュアのキャッツアイ。二組の力量の差が、劇中で如実に表れていました。ルパン一味は常にキャッツアイの二枚も三枚も上手であり、必然的に彼女たちの見せ場が少なかったです。

三姉妹の中でも、ルパンと行動を共にする末っ子の愛が、ヒロイン的な役回りを担っています。三枚の絵の正体に興味津々な彼女は、考えるより先に行動をしてしまい、彼の足を引っ張る展開が何度もありました。それがキャッツアイの力不足感を強めてしまっていました。

キャッツアイは美人で賢く、自立した女性といったイメージを抱いていました。しかし今作では、保護者のような立ち回りをするルパンに終始守られているだけ。イメージしていた彼女たちの姿が見られなかったのが残念でした。

銭形警部と内海のやり取りは、このコラボのコメディ部分を担っており面白かったです。ただしメインの泥棒や怪盗との絡みがなかったので、二人をもっと物語に活かしてほしかったです。

ノスタルジックなストーリー

話はテンポよく進んでいくものの、内容はベタで分かりやすい。オリジナルキャラの数が少ないからかもしれませんが、黒幕の正体も容易に想像がつきます。ゆえにその黒幕に騙されるキャッツアイが、賢く見えません。あと組織のボスが作戦の最前線に立っているのが、スケールの小ささを感じさせます。

おそらく話の根幹にあるのは、ノスタルジー。1980年代の舞台設定も相まって、劇中では昭和感溢れるやり取りが繰り広げられます。そのため往年のファンにとって、キャラクターを懐かしむには良い作品になっているでしょう。

『キャッツ・アイ』の声優陣は、亡くなられた方を除き、当時のキャストが続投。「僕ら世代の人が慣れ親しんだ声でやってもらいたいと思っていたので、声を変える選択肢は1ミリもなかった」と、石山プロデューサーは語ります(※1)。ただし愛に関しては、若いキャラの声としては少し無理がある印象を受けました。

『ルパン三世』のキャスト5人に関しては、安定感抜群。彼らの声を聴くだけで、いつもの面々にまた再会できた、という安心感があります。2021年に小林清志さんから引き継いだ大塚明夫さんが演じる次元も素晴らしい。

とはいえセルルックCGで描かれたキャラの表情が硬いので、せっかくの演技を最大限に生かしきれていないように感じられました。そして何より、この現代的なキャラデザと、ノスタルジックな物語が反発しあっています。

昭和の世界観を令和に描く試みとしては、リブート版『うる星やつら』(2022-)が挙げられます。原作っぽさと現代らしさがしっかり共存したタッチで描かれているので、当時を思い出しながら観るファンにとっては楽しめる作品となっています。

では今作が、そういった層に対してアプローチできているかというと、やはり新しいキャラデザが邪魔していると言わざるを得ません。もっと2Dアニメに寄せたものか、あるいは従来と同じ2Dを採用していれば、この違和感は緩和されたと考えられます。

対照的に、あまり作品を知らない若い層へのアプローチとしては、ベタで分かりやすいストーリーがノイズに思えます。捻りの無いストーリーには、あまり魅力を感じられない気がします。

結果として誰をターゲットにして作ったのかがぼやけており、それが作品に反映されている印象を受けました。あくまで有名シリーズがコラボしたお祭り作品と割り切れば、楽しめるかもしれません。

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最後に

シリーズが好きな方でも、好みが分かれそうなお祭り作品。ファンであれば、その目で確かめてみても良いのではないでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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