『劇場版 呪術廻戦0』感想:真の前日譚と化した純愛映画

(C)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (C)芥見下々/集英社

公開から11日で興収58億円超え。圧巻。

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作品情報

2017年に『ジャンプGIGA』に掲載された『東京都立呪術高等専門学校』のアニメ化。『呪術廻戦』の前日譚に位置づけられるエピソード。呪いとなった幼馴染に憑かれた青年の、呪術師としての成長を描く。『この世界の片隅に』などのMAPPAが、アニメーション制作を手掛ける。

原作: 芥見下々
出演: 緒方恵美 / 花澤香菜 / 小松未可子 / 内山昂輝 / 関 智一 ほか
監督: 朴性厚
脚本: 瀬古浩司
公開: 2021/12/24
上映時間: 105分

あらすじ

自身の死刑を望む高校生・乙骨憂太。
幼少の頃、結婚の約束を交わした幼馴染・祈本里香を交通事故により目の前で失った彼は、
呪いと化した彼女に憑かれ苦しんでいた。
そんな中、「呪い」を祓う為に「呪い」を学ぶ学校“東京都立呪術高等専門学校”の教師であり、
最強の呪術師・五条悟が現れ、乙骨を呪術高専に転入させる。
呪いと化した里香によって周りの人々を傷つけてしまう日々を送っていた乙骨は、
「生きてていいという自信が欲しい――」
と、呪術高専で里香の呪いを解くことを決意。
同級生の禪院真希・狗巻 棘・パンダと共に呪術師として歩みだすのだった。

『劇場版 呪術廻戦 0』予告|12月24日(金)公開/主題歌:King Gnu 「一途」 – YouTubeより引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

劇場版にピッタリなエピソード

人間の負の感情から生まれる「呪い」。呪いを自らの力に変え、呪いを祓う「呪術師」。漫画『呪術廻戦』では、呪術師と悪しき呪いの壮絶な戦いが繰り広げられます。

2018年から『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始したこの作品。現在も本誌で連載を続けており、単行本は18巻まで刊行されています。累計発行部数は6000万部を突破しており、圧倒的な人気ぶりが伺えます。

ひょんなことから呪力を手にした高校生・虎杖悠仁は、東京都立呪術高等専門学校(以下、都立呪術高専)に入学する。伏黒恵や釘崎野薔薇といった仲間たちや、五条悟などの指導者とともに、強大な敵に立ち向かう。

友情・努力・勝利を具現化した王道なストーリー。近年の人気漫画の傾向でもある、話のテンポの良さ。少年誌にしては珍しい、グロテスクな表現の数々。そしてキャラクター同士のやり取りや関係性の尊さ。こういった間違いなく「面白い」と言える要素が、『呪術~』には全て詰まっています。

同じくジャンプ系マンガである『鬼滅の刃』は、コロナ禍のステイホームを契機に人気が爆発しました。いまや子供から大人まで知られる国民的なコンテンツと化しています。『呪術~』もその追い風に乗って、幅広い層で人気が急増している作品の一つでしょう。

少年ジャンプでの連載開始前である2017年に、読み切りとして、本作のプロトタイプ的な作品が『ジャンプGIGA』に掲載されました。タイトルは『東京都立呪術高等専門学校』。のちに「0巻」として、単行本が発売されました。

気弱な青年・乙骨憂太と、その幼馴染・祈本里香の出会いから別れまでが描かれています。一つの完結した話である、この読み切り。『呪術~』では主人公が虎杖に変わっているのですが、本編にも乙骨が登場しており、本編の一年前の出来事として位置づけられています。

個人的には、このポイントに感動しました。読み切りのときの設定を、連載版でも踏襲するのが一般的ではないかと思います。しかし作者の芥見下々さんは、連載にあたって主人公や時代設定を変更しました。なおかつ乙骨は、虎杖の一つ上の先輩として登場させているのです。非常にクレバーな印象を受けました。

2020年10月から始まったテレビアニメは、原作コミックス8巻の起首雷同編までを映像化しています。アニメーション制作を担当するMAPPAをはじめとした素晴らしいスタッフ陣による、圧倒的なクオリティで好評を集めました。

テレビシリーズ最終話放送時に、「0巻」のアニメ化が発表されました。本編と地続きでありながら、独立した一本の物語として既に成立している、この前日譚。劇場版にするお話として、これ以上ない題材と考えられます。

前日譚としての良改変

「0巻」はテレビシリーズよりも時系列が前にあたる話であり、虎杖や伏黒、釘崎ら主要人物は登場しません。そういった異例な形式とも言える本作。蓋を開けてみれば、公開からたった11日で、興行収入58億円を突破するヒットを飛ばしています。

「呪術廻戦0」公開11日間で興行収入58億突破、動員431万超 - アニメ・ゲーム : 日刊スポーツ
21年12月24日に公開されたアニメ映画「劇場版 呪術廻戦0」(朴性厚監督)が、3日までの11日間で興行収入(興収)58億7306万4900円、動員431万4… - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)

交通事故に遭い、呪いと化した折本里香は、幼馴染の乙骨憂太に取り憑いていた。強大すぎる力を持つ彼女を祓うために、乙骨は都立呪術高専に入学する。担任の五条の不親切もあいまって、呪いについて何も知らないまま入学した彼は、呪術師としての学びを深めていく。

主人公である乙骨の視点で、物語が進んでいくこの映画。何も知らない彼の立場が、観客の視点と一致するため、専門用語を丁寧に説明する序盤の展開も違和感がありません。

そのため、原作が読み切りなので当然ではありますが、テレビシリーズを見ていない人でも理解できる物語になっています。

映画オリジナルに作られていない、原作に準拠したエピソード。さらにその中でも、劇場版の尺や題材に適したエピソードが選ばれている今作。このあたりは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020)よりも、テレビアニメの劇場版に適した話と言えます。

個性的な同級生である禪院真希や狗巻棘、パンダと出会う乙骨。前半は一年生4人が仲を深めていく様子が描かれます。五条曰く、「若人から青春を取り上げるなんて 許されていないんだよ 何人たりともね」。まさに高校生たちの何気ない日常が、キラキラと映し出されます。

後半になると、人間を襲う呪術師=呪詛師である夏油傑が現れてから、作品世界に徐々に影を落としていく。非呪術師を「猿」と呼び捨てる外道ぶりは、極悪そのもの。「来たる12月24日!! 日没と同時に!! 我々は百鬼夜行を行う!!!」と、五条らに宣戦布告を申し込む。

百鬼夜行の当日、呪術高専サイドと夏油サイドの総力戦が始まります。注目すべきは『呪術~』交流会編で初登場した京都校の生徒や、七海や伊地知、冥冥といった呪術師たち。こういった原作には出てこなかったけれど、テレビシリーズには既に登場しているキャラのシーンが追加されています。

オールキャストで戦いに挑んでいるお祭り感があって、テンションが上がりました。そしてテレビシリーズと地続きのエピソードであることがしっかり伝わってくるので、原作からの改変として素晴らしいポイントです。

このクライマックスをはじめ、全編を通してアクションの作画が凄いのが特徴的。「安心と信頼のMAPPA」と評されているのも納得です。特に乙骨vs夏油は迫力があり、圧倒されました。こちらも原作にはなかった黒閃も見れたので良かった。

他にも、前半の真希や棘が呪いを祓う場面や、パンダ&棘vs夏油のアクションなど、一つずつ挙げるとキリがありません。呪術師たちが戦う様子は皆カッコいいし、すべての戦闘シーンが見どころだと思います。

戦闘シーンだけでなく、日常を切り取った場面でも素晴らしい箇所がありました。朝起きた乙骨が制服を着るところの心地よさだったり、彼が食べる朝ご飯がすごく美味しそうだったり。そういった作画からも、本作への本気な姿勢がひしひしと伝わってきました。

逃げるのも死ぬのもダメ

テレビシリーズには登場しておらず、今回の劇場版で初お披露目となる乙骨。まだアニメ化されていない原作のストーリーでも重要人物となっていく彼を、緒方恵美さんが演じられています。

『幽遊白書』の蔵馬や『美少女戦士セーラームーン』シリーズのセーラーウラヌスに声をあてており、中性的な美少年役の印象が強い方です。

そんな彼女の代表作なのが、『エヴァンゲリオン』シリーズの主人公・碇シンジ。理不尽な状況に戸惑いつつも、使徒との戦いに身を投じる中学生を演じられていました。

乙骨という人物は、このシンジとリンクする部分が非常に多いです。例を挙げていくと、何も予備知識がないまま敵との戦いへと放り込まれる境遇、また戦いに対しての受動的な姿勢、しかし覚悟を決めたあとは一切ブレないところ、など。さらに劇中で真希に対して発する一言は、シンジの名言「逃げちゃダメだ」を彷彿とさせます。

というのも作者の芥見さんご自身は、エヴァ好きを公言されています。なので、少なからずシンジを意識してキャラ造形をされたと考えられます。今回の劇場版の配役に関しても、明言は控えていますが、上記を踏まえたキャスティングであると言っても過言ではありません。

しかしながらこの配役は明らかにエヴァを連想させるため、発表時には賛否が分かれていました。「乙骨=緒方さん=シンジ」といったイメージが、どうしても頭によぎってしまうため、別の方に演じてほしかったという意見も理解できます。

ただし個人的には、同年に完結した『エヴァンゲリオン』シリーズに対する、芥見さんの敬意が込められているのではないかと思いました。もちろんシンジと乙骨で異なる部分はいくつもありますし、それぞれに魅力があります。何より、緒方さんが吹き込んだ乙骨の声は、そういった議論をねじ伏せるパワーがありました。

彼に取り憑く「呪いの女王」里香を演じるのは、花澤香菜さん。完成された声には、怨霊としての加工が入ってはいるものの、彼女の感情の変化がしっかりと感じ取れる加工具合に収まっています。その力強くもあり、儚くもある演技には感動しました。

今作には、五条と夏油の過去を示す描写が挟まっています。またミゲルと乙骨が食事をしている場面も、エンドロール後に追加されています。おそらく今後アニメ化されるであろう原作エピソードを示唆するこれらの描写があるため、これからのテレビシリーズにも期待をさせてくれる作品でもありました。

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最後に

劇場版として完璧な題材を、一切の妥協が見られない出来でアニメ化した製作陣には感謝しかありません。2期の発表が待ち遠しくなりました。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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