『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』感想:ギャグ×シリアスの見事な融合

(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

『銀魂』の魅力がグッと凝縮された作品です。

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作品情報

2006年に放送を開始したテレビアニメ『銀魂』初の劇場版作品。原作は2003年に『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった同名漫画。本作は人気の高い長編エピソード「紅桜篇」をリメイクした。杉田智和、石田彰、子安武人らが再び声を当てるとともに、物語のキーパーソン・吉田松陽を山寺宏一が演じる。テレビシリーズに引き続き、サンライズがアニメーション制作を務める。

原作: 空知英秋
出演: 杉田智和 / 阪口大助 / 釘宮理恵 / 石田彰 / 子安武人 ほか
監督: 高松信司
脚本: 大和屋暁
公開: 2010/04/24
上映時間: 96分

あらすじ

宇宙からやってきた侵略者・天人を前になす術のない幕府。だが、そんな国を憂い、戦い続ける志士たちがいた。桂小太郎、高杉晋助、坂田銀時。数年に及ぶ死闘の末、彼らは戦い敗れて“国”を失った。そして生き残った銀時は万事屋を営み、桂は身を潜め譲位活動を続け、高杉は幕府や天人の支配の破壊を企む。そんなある日、辻斬りが現れ、その凶刃によって桂が姿を消す。その刀は人工知能を持ち、使用者に寄生して戦闘データを蓄積し進化する妖刀“紅桜”。最強の戦闘集団・鬼兵隊を復活させ、高杉が“紅桜”を擁して動き出したのだ・・・。

劇場版 銀魂 新訳紅桜篇 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画より引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

原作を再現したアニメ化

15年半にわたる漫画連載が2019年に完結した『銀魂』。2006年から始まったアニメも、今年1月に公開された『銀魂 THE FINAL』で完結を迎えました。今回扱うのは、2010年に公開された劇場版1作目です。

ストーリーをおおまかに説明すると、

江戸では、突如宙から舞い降りた異人「天人」の台頭と廃刀令により侍が衰退の一途をたどっていた。しかし一人、侍の魂を堅持する男が…。その名は坂田銀時。甘党&無鉄砲なこの男が、腐った江戸を一刀両断…するかも!?

『銀魂』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイトより引用

幕末の江戸を舞台にしており、登場人物など作中の固有名詞の多くは、歴史上の実際の名前をもじっています。その中で劇場版にも登場する作品の主要キャラクターはこの3人。

  • 坂田銀時:本作の主人公。実家の剣術道場の跡取りである志村新八や、戦闘民族・夜兎族の少女の神楽、巨大犬の定春とともになんでも屋・万事屋を営む。少年期に吉田松陽から学問・剣術を学ぶ。その後、天人との戦争・攘夷戦争に参加し、「白夜叉」と呼ばれ恐れられる。常に無気力だが、決めるときは決める男。
  • 桂小太郎:銀時とともに松陽から学問・剣術を学んだ少年期を経て、攘夷戦争に参加する。攘夷党のリーダーとしてテロリスト活動を続ける穏健派攘夷浪士。謎の地球外生物・エリザベスと行動を共にしている。愛称は「ヅラ」。
  • 高杉晋助:銀時とともに少年期に松陽から学問・剣術を学び、攘夷戦争に参加する。師である松陽を奪った世界への憎しみから、武装集団・鬼兵隊を結成し、幕府の転覆を企てる過激派攘夷浪士。

架空の江戸を舞台にして繰り広げられるのは、SFコメディ。その笑いの要素はさまざま。『ドラゴンボール』をはじめとした様々なジャンプ系作品のパロディ。『クレヨンしんちゃん』とは比べれないほどに過激な下ネタ。時事問題や社会のトレンドを風刺したギャグ。そして本作の製作状況や批判を、巧妙に笑いに変えるメタ的なネタ。このように幅広いネタがテンポよく積み重ねられます。

15年半にわたる長期連載ができるまでに本作が人気を獲得した要因として、原作者・空知英秋さんの類まれな文才が挙げられます。漫才のようにきれいなフリとオチを使った文章構成力。その代表的な例が、単行本に収録されている質問コーナーに対するコメント。「銀魂 質問コーナー」などで検索すると転載画像が見れると思いますが、そういったコメントを拝読すると、笑いのセンスと巧みな文章の構成力に驚かされます。文章を書く者の端くれとして、憧れの存在です。

2006年から始まったアニメでは、ギャグ要素や台詞回しといった原作の魅力が余すところなく再現されています。テレビシリーズで監督・シリーズ構成を務めた高松信司さん、大和屋暁さん、藤田陽一さん(今作の監修)をはじめとした、製作陣の見事な采配によるものだと思います。パロディや下ネタを忠実に映像化するだけでなく、オリジナルエピソードを作る際は『銀魂』の世界観を崩さないように、アニメ制作の裏側を晒すメタ的なネタを取り入れました。

そしてアニメ化によって強化されたのが、キャラクター同士のやりとりの妙。全員がボケもしくはツッコミに回れるという柔軟性を持っており、カッコいい面と笑える面の両方を楽しめます。そういった『銀魂』らしい登場人物の特徴が、演じている声優の方々の好演により、最大限に引き出されているのです。この魅力については『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(2020)の記事でも少し触れました。

長編としての魅力

作品初期は、ギャグ要素を含みながら緩やかに物語が展開していく構成でした。しかし初の長編エピソード「紅桜篇」を機に、レギュラードラマ(ギャグメイン)とストーリードラマ(物語メイン)がはっきり分かれていきます。ストーリードラマでたびたび描かれる、銀時たちと彼らの師である吉田松陽との物語が、後に描かれる最終長編まで作品の主幹となりました。

今回の劇場版のベースとなっている「紅桜篇」は、テレビシリーズ第58話から第61話のエピソードであり、原作では第11巻~第12巻にあたります。のちに福田雄一監督によって映像化された実写映画『銀魂』(2017)は、このエピソードを主軸としています。そのため『銀魂』といえば、「紅桜篇」という印象が強い人も多いでしょう。話の構造が分かりやすくもあり、先述した銀時・桂・高杉の3人が一度に絡む初めての話でもあるからだと考えられます。

長編の魅力の一つとして、ギャグとシリアスの両立が挙げられます。パロディ、下ネタ、メタフィクションネタを描いた序盤から、徐々にシリアスな物語にシフトしていき、終盤はアクションシーンで締めるという形で構成されます。これにより、ギャグ、アクション、ストーリー、感動をすべて内包した幅広い魅力を持つ作品となったのです。

本作では、エリザベスが万事屋に訪れた場面や、刀鍛冶の村田兄弟のもとを銀時が尋ねる場面にて、ギャグ的な掛け合いが盛り込まれています。しかし事件の真相や鬼兵隊の暗躍が明らかになるほど、だんだんとシリアス色が濃くなっていきます。

テレビ版との相違点

ベースとなる話は同じですが、もちろん30分アニメ4本分をそのまま一本の映画にしたわけではありません。テレビと映画では縦横のサイズ比が違います。それだけでなくテレビシリーズの作画を再使用したシーンであっても、すべてのカットで色や背景をやり直しています(※1)。

※1:『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』パンフレット参照

描き直しによって作画面で良くなっている部分が多々見受けられます。例えば、夜のシーンでより暗い色合いに変更されていたり、空などの背景描写が描きこまれていたりしています。そしてクライマックスの銀時と桂が天人と戦うラストバトルは、今作の一番の作画的な見どころです。二人が勢いよく動き回るアクションシーンは、テレビ版より力を入れて作られていることが、動きのぬるぬる具合から分かります。なので既に物語を知っていたとしても、本作を観る意義はあると思います。

本作にはプロローグとエピローグに、映画オリジナルのシーンが差し込まれています。万事屋を映した静止画に声を当てているだけの、いわゆる「BGMオンリー」のカットから映画は始まります。「侍の国。僕らの国がそう呼ばれたのは、今は昔の話…。」から始まるおなじみのナレーション。そしてそこで繰り広げられる万事屋3人の軽快な掛け合いによって、登場人物や世界観が軽く説明されます。

神楽から言及されるように、テレビシリーズの劇場版は一見さんお断りに思えます。ただし今作に関しては、先述したように話の構造が分かりやすいので、何も知らずに見ても楽しめるように感じました。

物語上の違いとしては、テレビ版で登場しないキャラクターたちが登場します。真選組の面々や、原作連載時にはまだ登場していなかった神威と阿伏兎が登場するシーンがいくつか追加されているのです。正直おまけ程度の見せ場しかありません。しかしながらこれは、エピローグの展開に繋がっていきます。

その展開とは、本編終了後に突如発表される「劇場版銀魂外伝 真選組血風録」の予告。本編で出番が少ないことを不満に思った真選組が勝手に作ったウソ予告なのです。彼らを皮切りにして、劇場版2作目への出演を企む登場人物たちが徐々に万事屋に押し寄せてきます。

最終的に配給会社である「ワーナー・ブラザース」をもじったワーさん・ナーさんが登場します。この展開に至っても『BLEACH』や『NARUTO -ナルト-』といったジャンプ作品のネタが入れ込まれています。そして最後は『キッズ・リターン』(1996)のパロディで締められます。最後まで笑いを貫く姿勢に、「カッコよく決めて終わりにしない」といった製作陣の気概が感じられます。

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最後に

ギャグとシリアスを詰め合わせた本作。『銀魂』導入編としておススメしたい作品に仕上がっています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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