『シン・ウルトラマン』感想:エンタメ大作への究極のリブート

(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

来たぞ、われらの、ウルトラマン。

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作品情報

1966~67年に放送された空想特撮シリーズ『ウルトラマン』を新たに映画化。巨大不明生物がはびこる日本に、突如として大気圏外から銀色の巨人が襲来する。『シン・ゴジラ』の庵野秀明が企画・脚本を、樋口真嗣が監督を務める。

出演: 斎藤工 / 長澤まさみ / 有岡大貴 / 早見あかり / 西島秀俊 ほか
監督: 樋口真嗣
脚本: 庵野秀明
公開: 2022/05/13
上映時間: 113分

あらすじ

次々と巨大不明生物【禍威獣(カイジュウ)】があらわれ、その存在が日常となった日本。
通常兵器は全く役に立たず、限界を迎える日本政府は、禍威獣対策のスペシャリストを集結し、【禍威獣特設対策室】通称【禍特対(カトクタイ)】を設立。
禍威獣の危機がせまる中、大気圏外から突如あらわれた銀色の巨人。
禍特対による報告書に書かれていたのは…【ウルトラマン(仮称)、正体不明】。

映画『シン・ウルトラマン』予告【2022年5月13日(金)公開】 – YouTubeより引用
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レビュー

このレビューは『シン・ウルトラマン』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

作品愛に溢れたリブート

ナウシカやマクロス、エヴァにゴジラ。それら全てに関わったトップクリエイター・庵野秀明さんは、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-96)で社会現象を引き起こし、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』(2021)にてそのシリーズを完結させました。

『シン・ゴジラ』(2016)で久々に実写映画を監督した彼が、次に手掛ける題材は円谷プロの代表作『ウルトラマン』(1966-67)。1966年の放送開始以降、半世紀以上にわたって続くウルトラマンシリーズの礎となった特撮ドラマです。

子供の頃にウルトラマンに触れてから、シリーズのファンとなった庵野さん。昨年から開催されている『庵野秀明展』では、彼の仕事の遍歴、作品資料、そして数々の特撮から受けた影響を垣間見ることができます。

20代のときに彼が、自主制作映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(1983)を作ったのは、ファンの間では有名な話でしょう。自らウルトラマンに変身している点に、その思い入れの強さが感じ取れます。

映画『DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン』の感想・レビュー[310件] | Filmarks
レビュー数:310件 / 平均スコア:★★★★3.7点

本作で庵野さんは企画・脚本・総監修という立場であり、監督は数十年来の付き合いである樋口真嗣さんが担当。監督をしていない理由は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』や、来年公開予定の『シン・仮面ライダー』による多忙だと語っています(※1)。

※1:『シン・ウルトラマン デザインワークス』参照

他にも准監督の尾上克郎さんをはじめ、轟木一騎さんや摩砂雪さん、デザインを担当した前田真宏さんや山下いくとさんなど、庵野作品ではお馴染みの面々が顔をそろえています。

『庵野秀明展』の内容の濃密さに代表されるように、庵野作品は詳細な設定や製作の裏側をたくさん公開しています。今作はパンフレットに加え、『シン・ウルトラマン デザインワークス』が劇場で販売されており、その中にこの映画の情報が豊富に詰まっていました。

ちなみに私個人としては、シリーズ自体に触れたことがほぼ無く、今回初めてちゃんとウルトラマンを観ました。なのでこれから書く内容は、鑑賞後に調べた知識に基づいているに過ぎません。とはいえシリーズ未見の立場であっても、製作陣の作品愛がひしひしと伝わってきました。

製作陣のこだわりは、冒頭から溢れていました。『ウルトラマン』の前身番組『ウルトラQ』(1966)のOPをオマージュしながら、タイトルが映し出される。その後に出現する巨大不明生物たちも『ウルトラQ』からの引用であり、二番組の地続きの世界観が巧みに演出されています。

この映画の特徴として、「実相寺アングル」風のカットが多用されています。実相寺アングルとは、人の背中や椅子越しに、喋っている人物を映した画面構成の意味。初代ウルトラマンに携わった実相寺昭雄監督がよく使うことから、そう呼ばれており、彼へのリスペクトが表れていました。

ウルトラマンの代名詞と言える、変身ポーズとSE。いつ、どのように、この変身を魅せるのか。このあたり観客のテンションが上がるよう考えられており、ファンの人からすると「分かっている」となるタイミングでしょう。

こうした旧作へのリスペクトと同時に、庵野さんの作家性が見受けられるのも特徴的な本作。先述した冒頭映像では、巨大不明生物が日本に現れた歴史が、静止画と明朝体テロップで高速に語られていく。過剰なまでに映像内に情報を盛り込みながらも、話の要点はしっかり伝える、庵野さんの十八番とも言える演出に思いました。

またポテチの袋の中や、リモコンの上にカメラが置かれており、そこから人物を撮影したカットが採用されています。観客の想定を超える異様なアングルから撮られた映像は、「シン・エヴァ」にも通ずるところがありました。

ウルトラマンを真正面から描き直す

「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」

このキャッチコピーのとおり、宇宙からやってきた彼が、自分を犠牲にしてまで人類を守る過程と理由が描かれていきます。

物語の流れは初代ウルトラマンに沿っており、テレビシリーズ全39話から、庵野さんが決めた5つのエピソードを元にしています。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の序や破に近い、オムニバス的な構成でありながら、しっかり一本の物語として繋がっているように感じました。

巨大不明生物「禍威獣」の専門対策チーム「禍特対」。透明禍威獣ネロンガの対処法を講じる最中、赤い飛翔体が襲来する。直後に現れた謎の銀色の巨人によって、ネロンガは倒される。「ウルトラマン」と命名されたその巨人は、次に出現した地底禍威獣ガボラもあっさり倒してしまう。

序盤はウルトラマンが謎に包まれたまま、人間を守る為に禍威獣と戦っています。外星人である彼が地球に来て、人間に興味や好奇心を抱き、好きになっていく過程が、各エピソードを通して語られていきます。

ウルトラマンに変身するのは、禍特対のメンバーである神永新二。中盤に登場する二体の外星人との交流によって、外星人と人類の狭間に立っている唯一無二な点にフォーカスがあたっていきます。

外星人ザラブは、日本政府と不平等条約を締結しようとするも失敗に終わる。その後接触してきたメフィラスは、ザラブとは対照的に平和的解決を望み、紳士的な姿勢で政府との交渉を開始。「郷に入っては郷に従う」や「備えあれば憂いなし」といった言葉を好む。

メフィラスを演じる山本耕史さんは最高に役にハマっており、顔は笑っているのに目の奥は全然笑っていません。彼の纏っている独特な雰囲気からして、人気が出るのも頷けます。特に公園から居酒屋までの神永との対話が秀逸で、人類の命運がかかった会話と、周囲の人々のほのぼのとした日常の対比が恐ろしい。

平和的な手段ではあるものの、人類の支配を試みるメフィラスに賛同できないウルトラマン。巨大化したメフィラスと戦闘を始める。

「私は神ではない、人間と同じ命を持つ生物だ。」

神格化される自分や、人間を守る価値といった葛藤に苛まれながら、光の星の使者・ゾーフィが差し出した天体制圧用最終兵器ゼットンとの戦いへ赴くのです。

主要キャストの演技力が言わずもがな素晴らしく、世界観のリアリティを揺るぎないものにしています。

特筆すべきは神永を演じる、斎藤工さん。喜怒哀楽のない無表情のため、一見して不気味に思えます。しかし目の内側に強い意思が宿っているように感じられる演技は、正義のヒーロー・ウルトラマンを見事に体現しています。

禍特対の他のメンバーとしては、有岡大貴さん演じる物理学者・滝明久は、等身大の人間らしい弱さが描かれています。なので彼が一矢報いる終盤の展開にはグッときました。

『シン・ゴジラ』ヒットの功罪

監督やスタッフが異なるとはいえ、「シン」を冠する特撮同士、『シン・ゴジラ』と比較して感想を語る人は多いでしょう。

ゴジラという人知を超えた怪物は、『ゴジラ』(1954)公開当時の人々の記憶に新しかった原爆と重なります。その恐怖は、東日本大震災発生からわずか5年後に製作された『シン・ゴジラ』に受け継がれています。「蒲田くん」ことゴジラ第2形態や、内閣総辞職ビームと揶揄される熱線放射は、観客に圧倒的な絶望感を突き付けました。

すなわち人類が到底太刀打ちできない脅威を描いており、それに対する向き合い方を打ち出していたのです。公開前の予想を超えるムーブメントを巻き起こし、『日本沈没-希望のひと-』(2021)や『大怪獣のあとしまつ』(2022)など、後に似たような作品がいくつも作られました。

本作も『シン・ゴジラ』同様にストーリーのテンポがよく、専門用語を多く含んだ台詞の応酬は心地よい。加えて安直なラブシーンがないあたりも共通しており、好感が持てました。

そういった共通点はあるものの、『シン・ゴジラ』を期待して今作を観に行くと、ガッカリすると思います。それは二つが明らかに別物だから。『シン・ゴジラ』が社会的メッセージを内包しているのに対し、『シン・ウルトラマン』はウルトラマンをエンターテインメントとして真正面から描き直しています。

この映画でまず印象的なのは、ウルトラマンが戦うアクションシーンがカッコいい、というところです。ベータカプセルのスイッチを入れての変身や、スペシウム光線、禍威獣との肉弾戦。初代ウルトラマンを形成していた要素一つ一つが、ケレン味たっぷりに演出されています。

旧作をリアルタイムで見ていた子供たちは、たぶんこういう感情の高ぶりを抱いていたのだろう、と思わされました。

さらに全編が単なるノスタルジーに収まっておらず、現代に再び映像化する意味が伺えました。例えばカラータイマーの有無や、科特隊(禍特対)の服装などのディティールの変更による、SF的なリアリティの追求。今回のウルトラマンから滲み出る非「人間」感からは、恐怖すら感じました。

しかし一点だけ気になったのが、女性に関する描写。長澤まさみさん演じる分析官・浅見弘子は、任務に取りかかる時に自分や他人のお尻を叩くのです。神永が彼女の体臭をじっくりと嗅ぐ展開もありました。見る人によっては、ハラスメントと捉えられかねない演出に映りました。

物語中盤、メフィラスは高い技術を世界に広めるため、浅見を巨大化させる。TikTokに次々とアップされる彼女の映像を見て、彼は人間の愚かさを思い知った。隊員が巨大化する展開は旧作にもあるとはいえ、スカート姿を下から撮影するショットからは露悪性が感じられ、居心地が悪かったです。もう少し現代ならではの配慮ある演出をしてほしかったです。

ゴジラ、エヴァンゲリオン、ウルトラマン、そして仮面ライダー。4作品のコラボレーション「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」が今年発表されました。個人的にこの企画は、映像作品というよりは、グッズ展開やイベントにとどまると思っています。

とはいえ今作に『シン・ゴジラ』と同じキャラとも考えられる人物が登場したり、「マルチバース」の存在が劇中の台詞から明らかになったりするなど、ユニバース展開を若干匂わせています。そのため映像作品でのクロスオーバーの可能性も完全には否定できなくなり、今後の展開にますます目が離せなくなりました。

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最後に

リブートということで、ウルトラマンを一切知らなくても十分楽しめる、非常に間口の広いエンタメ映画でした。もし初代ウルトラマンが好きであれば、鑑賞後の意見の賛否を含めて、何倍も楽しめるに違いありません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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