ドラマ『ドラゴン桜(2021)』感想:時代を投影した生徒たちの成長譚

(C)TBS

新進気鋭のキャスト陣の演技に惹かれる人間ドラマの秀作。

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作品情報

2005年に放送されたドラマ『ドラゴン桜』の続編。前作から15年後、弁護士・桜木健二が再び生徒たちを東京大学現役合格へ導く。阿部寛と長澤まさみが続投するほか、オーディションで選ばれた新キャスト7人が生徒を演じる。『半沢直樹』を手掛けた福澤克雄らが演出を務め、放送作家のオークラらが脚本を担当した。

原作: 三田紀房
出演: 阿部寛 / 長澤まさみ / 髙橋海人 / 南沙良 / 平手友梨奈 ほか
監督: 福澤克雄 / 石井康晴 / 青山貴洋
脚本: オークラ / 李正美 / 小山正太 / 山本奈奈
放送期間: 2021/04/25 – 06/27
話数: 10話

あらすじ

かつて、落ちこぼれだった龍山高校から東京大学合格者を輩出し、一躍時の人となった元暴走族の弁護士・桜木建二(阿部寛)。
その後法律事務所を設立し、学校再建のエキスパートとして順風満帆な弁護士人生を歩んでいた──時は令和。偏差値32で経営破綻寸前の龍海学園で、教頭・高原浩之(及川光博)が桜木による再建案を提案する。
しかし、自由な校風を理想に掲げる理事長・龍野久美子(江口のりこ)は進学校化に反対し、意見が割れていた。果たして桜木、そして彼の元教え子であり法律事務所で一緒に働く弁護士の水野直美(長澤まさみ)は東大合格者を出し、学園を再建できるのか…

第1話のあらすじ|TBSテレビ:日曜劇場『ドラゴン桜』より引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

出世作としての期待

2005年に放送されたドラマ『ドラゴン桜』は、雑誌『モーニング』で連載されていた同名漫画を原作としています。元暴走族の貧乏弁護士である桜木建二が、偏差値36の龍山高校を進学校へと再建するために、「東大専科」を設立し自ら生徒を指導します。

その名の通り、桜木が掲げるのは学歴社会の最高峰・東京大学の現役合格。周囲から批判されながらも東大専科に加入した落ちこぼれ6人は、一丸となって東大合格を目指します。様々な境遇を持つ高校生たちが自身の夢や目標を見つけ、それに向かって努力する姿はとても魅力的でした。

最終話の視聴率が20%を超えるなど、人気を集めたこの作品。劇中で取り上げられた勉強法の数々は話題を呼び、実際に東大を受験した人数も増えたと言われています。

そして生徒役で出演していた全員が、さまざまな分野の第一線で現在も活躍しているのも特徴的。山下智久さんや長澤まさみさん、新垣結衣さんなど、そうそうたる俳優の共演は15年後の現在からみると奇跡的と言えます。

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そんな人気作の続編である今作。当初は2020年7月に放送開始が予定されていましたが、コロナウイルス感染拡大の影響を受けて2021年4月に延期されました。前作から15年後を舞台にした今作では、桜木が新たな高校生たちを東京大学へと導きます。

原作としてクレジットされているのが『ドラゴン桜2』。2018~21年に連載された漫画『ドラゴン桜』の正統続編です。しかしながらドラマの内容は、この原作とは大きく変更されており、ほぼオリジナルといっても過言ではありません。

一作目とは異なり、今回の舞台となるのは龍海学園。東大専科の生徒は完全オリジナル、もしくは原作に登場するキャラクターでも、名前以外はオリジナルの設定になっています。また生徒たちが成長する様子とともに、学園の存続をめぐる問題も話の主軸になっており、二本柱でストーリーが展開していきます。

続編のポスタービジュアルが発表されたときにまず思ったのは、「主演の阿部寛さんのビジュアルが15年前から全く変わっていない」こと。体型維持というかアンチエイジングというか、日々の努力が垣間見れました。

前作のキャストの出世も相まって、今作で生徒を演じるのは誰なのか注目が集まりました。生徒役の俳優はTwitterにて一日一人ずつ発表され、製作側も明らかに期待感を煽っていました。

King & Princeの髙橋海人さんや元欅坂46の平手友梨奈さんをはじめ、映画など様々な媒体で活躍の幅を広げる気鋭の役者7人が抜擢されました。1000人規模で行われたオーディションを勝ち抜いた彼ら。それを裏付ける演技力の高さが本編から伺えます。

生徒たちの成長物語

一作目と同じく本作でも、東大を目指す中で葛藤する高校生たちの成長物語が丁寧に描かれています。二作の登場人物を比較すると、共通点の多さに気づかされます。

2005年版の東大専科6人の境遇を簡潔に説明すると、

  • 矢島勇介(山下智久):実家が鉄工所を営む。父親が蒸発。桜木に借金返済の恩義がある。
  • 水野直美(長澤まさみ):実家が居酒屋を営む。店を継ぐことを母親に押し付けられる。
  • 奥野一郎(中尾明慶):出来の良い双子の弟と比較される。
  • 緒方英喜(小池徹平):厳格な父親と対立する。
  • 香坂よしの(新垣結衣):矢島の彼女。特に目標なく専科に加入する。
  • 小林麻紀(サエコ):タレントをしている友人に対抗心を持っている。

一方で2021年版の東大専科7人は、こういった感じ。

  • 瀬戸輝(髙橋海人):実家がラーメン屋を営む。両親を亡くす。桜木に借金返済の恩義がある。
  • 早瀬菜緒(南沙良):飽き性。特に目標なく専科に加入する。
  • 岩崎楓(平手友梨奈):プロ選手の道に進むことを両親に押し付けられる。
  • 天野晃一郎(加藤清史郎):出来の良い双子の弟と比較される。
  • 藤井遼(鈴鹿央士):出来の良い二人の兄と比較される。
  • 小杉麻里(志田彩良):高卒で就職することを父親に押し付けられる。
  • 原健太(細田佳央太):発達障害をもっている。

以上のように、今作は前作を踏襲した人物配置になっています。ただし大きく異なるのが、原健太という存在。2005年版にはいなかった役回りで、原作漫画にも出てこないオリジナルキャラクターです。彼こそ、2021年版の「キモ」だと思います。

発達障害があるために、彼は他の先生からは勉強が苦手と思われてきました。しかし桜木は彼の学習への高い意欲に目をつけます。本を用いた学習法であれば、驚異的な速さで知識を吸収できることを知り、東大専科にスカウトします。一人ひとりを尊重して接することの重要性を伝えるエピソードでした。

健太を演じた細田さんは、髪を切ったり増量したりするなど、普段とは違う外見になっています。そしてわざとらしく見えてしまいがちな難しい役を、不快感なく自然に演じているのが素晴らしい。彼を教えていた田村先生を決して非難せず、話の落とし所も各方面に配慮されており感動しました。

健太に象徴されるように、桜木の学習法が一作目から変化しているのも印象的。詰め込み教育がメインだった前作とは対照的に、YouTubeやTwitterといったSNSの活用をはじめとした「知識のアウトプット」が授業に盛り込まれています。学習法の違いに時代の変化が反映されているのです。

ラストまで観ると、このドラマが藤井遼の成長物語であることが分かります。観ていて胸糞悪くなるほどの性格の悪さから、序盤は東大専科とは対立していました。健太へ暴力をふるうシーンは、本当に目を背けたくなります。

しかし桜木との勝負に負け、自分も他人に劣る部分を持っており、さらに自身の性格が悪いという事実を受け入れます。専科に加入した後は成績の伸び悩みに苦しみますが、それでも前へ進むことを辞めませんでした。藤井は7人の中で最も挫折と成長をしたと言えます。そんな彼が受験本番の日にとる行動には心を打たれました。

いま挙げた2人だけでなく7人全員、ひいては桜木の子分的存在だった小橋と岩井まで、一人ひとりが魅力を持っています。その要因は脚本や演出はもちろん、演じた俳優たちの演技にあるでしょう。素晴らしい演技で彼らを体現した役者陣。今後ますます目が離せなくなりそうです。

2005年版を鑑賞したとき、高校の教師たちが画一的に描かれている点が気になりました。全員が同じ意見で桜木に反発する。東大専科を担当した井野先生ですら、終盤まで「彼のやり方には賛成できない」といった主張を曲げない。彼らは「桜木に反発する人」以外の何者でもありませんでした。

2021年版でもほとんどの教師は同じように描かれています。ただしその中でも、田村先生が印象強く登場したり理事長が教育熱心であったり、テンプレに見えないような工夫は伺えます。これ以上キャラを追加すると多すぎて扱い切れないかもしれないので、現状が良いバランスと言えるかもしれません。

日曜劇場の風合い

本作は複数の作家が脚本に携わっています。中でも目を引くのは放送作家のオークラさん。バナナマンやおぎやはぎのラジオや、『ゴッドタン』などのバラエティ番組を支える名裏方として知られています。

脚本の経験もあり、2020年にはTBS製作のラジオドラマ『半沢直樹 敗れし者の物語』で全4章あるうちの「浅野支店長編」を手掛けました。笑いを絶妙に織り交ぜた人間模様を書く彼は、本作の人間ドラマとしての安定感を支えています。

同じラジオドラマを手掛けた李正美さんも、ともに脚本を担当しています。映画『七つの会議』(2019)や『半沢直樹』(2020)にも脚本として参加していました。それらの作品で十八番である「倍返し」的な逆転劇が、今作の終盤にも用意されています。

というのも演出を手掛けているのは、TBSテレビの福澤克雄さん。日曜劇場の名を知らしめた『半沢直樹』を皮切りに、『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』『陸王』『ノーサイド・ゲーム』『七つの会議』といった、多くの池井戸潤さん原作の映像作品を世に送り出してきました。

役者陣にも及川光博さんや江口のりこさんといった『半沢直樹』シリーズ経験者をキャスティングしています。今回の『ドラゴン桜』には、その配役を逆手に取った種明かしがあります。同じく福澤演出で非「池井戸」作品である『小さな巨人』(2017)の「香川照之が実は…」に近い印象を受けました。

「日曜劇場」的な要素は物語構成にも取り入れられています。先述したとおり、学園の土地売却問題も話の大きな軸になっている今回。土地売却をかけた大人たちをめぐるシリアスな展開や演出は、全編が明るい青春劇だった一作目には見られませんでした。

学園存続のカギを握る桜木の教え子たちの登場や、2年前にその教え子が起こした事件など、話自体は非常に面白い。ただそれは『ドラゴン桜』には求めていない、というのが正直な感想。二本柱にしていることで、魅力的な生徒たちを映す時間が相対的に減っています。出来ることなら彼らのやり取りをもっと長く見ていたかったです。

二本柱の弊害はラストにまで及んでおり、受験の合否が予想できてしまうのは問題だと感じました。合否の結果がその後の土地売却問題の展開に絡んでいるため、「7人いるうち5人が合格するんだろうな」ということは途中で察することができます。せっかくエモーションが高まっているシーンなのに残念でした。

とは言いつつも、前作の東大専科6人が総出演した最終話にはテンションが上がらざるをえません。学園存続に際してどういった協力をしたかが具体的に描写されず、そこがモヤっとくる部分もありますが、客演してくれたこと自体が嬉しかったのも事実です。

ここまで述べた不満点はありつつも、生徒たちの成長に魅せられ最後まで見続けることができました。これだけ生徒たちのドラマを生き生きと描ける方々であれば、わざわざ逆転劇の要素を取り入れずとも、素晴らしい人間ドラマを書けると思います。脚本家や俳優の方々の次回作が観てみたくなりました。

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最後に

第1話を観たときは「日曜劇場」特有の演出に嫌気がさしそうになったが、徐々に生徒一人ひとりの物語に魅せられていき、最終話には号泣する。そんな尻上がりのドラマでした。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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