『非公認戦隊アキバレンジャー シーズン痛』感想:ディープに拡大した世界観の終結

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新作いつまでも待っています。

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作品情報

2012年に放送されたスーパー戦隊シリーズのセルフパロディ作品『非公認戦隊アキバレンジャー』の続編。妄想の力で戦う秋葉原の戦士たちが、再び悪の組織に立ち向かう。主演の和田正人をはじめ、お馴染みのキャストやスタッフが続投するほか、2代目アキバブルーを澤田汐音が演じた。

原作: 八手三郎
出演: 和田正人 / 澤田汐音 / 荻野可鈴 / 内田真礼 / 穂花 ほか
監督: 田﨑竜太 / 鈴村展弘
脚本: 荒川稔久
放送期間: 2013/04/05 – 06/28
話数: 13話

あらすじ

2012年、春。アキバレンジャーたちが妄想世界の敵・ステマ乙と繰り広げた激闘から早くも9カ月。その後、彼らは平凡な日々を送っていた。信夫は戦隊カフェ『ひみつきち』で葉加瀬博世と、アキバレンジャーだった頃を懐かしむ。…が、その回想は少しいびつで、「こんなドラマだったっけ?」と違和感がぬぐえない。そんな中、アキバレンジャーが公認戦隊の歴史に組み込まれているというあり得ない現象を目の当たりにした信夫たち。非公認であるはずのアキバレンジャーが公認様!?これは絶対に何かの間違いのはず。
いかにも思わせぶりでドラマチックな展開をにおわせる現象が、次々に迫りくる!

BS朝日 – 非公認戦隊 アキバレンジャー シーズン痛(ツー)より引用
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レビュー

このレビューは『非公認戦隊アキバレンジャー シーズン痛』および関連作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

パラレル的な幕開け

秋葉原をモチーフにした深夜特撮ドラマ『非公認戦隊アキバレンジャー』(2012)。ストーリーやキャラ設定、デザイン、商品展開、その全てが大人向けに作られた、東映によるスーパー戦隊シリーズ(以下、公認戦隊)のセルフパロディです。

本家本元だからこそできる公認戦隊の小ネタをふんだんに盛り込んだメタフィクションコメディ。豪華ゲストが客演を果たし、最初から最後まで怒涛の展開が続きます。放送後、戦隊好きからの多くの反響を受け、続編『シーズン痛』の製作が決まります。

その発表方法も「非公認」ならでは。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013-14)の放送が迫る中で開催された、公認戦隊のお祭りイベント『超英雄祭 KAMEN RIDER×SUPER SENTAI LIVE&SHOW 2013』に、主人公の赤木信夫がサプライズ登場するかたちで行われました。

アキバレンジャーが解散して9ヶ月後から、物語は始まります。何事もない日常を過ごしていたスーパー戦隊オタク・赤木信夫は、東映から公認される日を願って戦った日々を回顧していた。第1話では、信夫が彼をスカウトした葉加瀬博世らとともに、前作の思い出を語っていく。

しかしその回想は、前作の視聴者にとっては「存在しない記憶」。八手三郎との戦いは無かったことにされ、ペンタゴンにスカウトされたのは信夫からアキバブルー・青柳美月に改変されていた。なので今作の世界観は、前作と似て非なるパラレルワールドではないのか、と想像させます。

また本作には、美月役の日南響子さんが出演しません。映画『桜姫』(2013)など、スケジュールの都合が理由と言われています。ただし第1話の新しく撮影した回想シーンのみに出演しています。ですがその場面では髪が伸びており、明らかな繋ぎの「雑さ」は、意図的に謎が仕込まれているように感じられました。

第1話のラスト、公認戦隊の中でも高い人気を誇る『五星戦隊ダイレンジャー』(1993-94)の存在が、突如として消えた。その代わり、アキバレンジャーが『五星戦隊アキバレンジャー』として公認戦隊になっている。ここから信夫たちの新たな戦いが幕を開けます。

劇中で『五星戦隊アキバレンジャー』は、視聴率低迷・路線変更の末に打ち切られた黒歴史と語られていました。一方ダイレンジャーは、マスコットキャラの中華戦隊チャイナマンへと改変。これは当時実際にあった没タイトルを踏まえた名称であり、芸の細かさが伺えます。

さらに第3話の『ダイレンジャー』OP再現の細密さからは、製作陣の本気ぶりが伝わってきました。その後、リュウレンジャーが本当の記憶を取り戻すと、関智一さんからオリジナルキャストの和田圭市さんに声が変化。信夫たちと協力して敵を倒す流れは、アツい展開でした。

2期ならではのボリュームアップ

新たな敵に対抗するため信夫と博世は、萌黄ゆめりあ(CN)改め横山優子を呼び寄せたほか、2代目ブルーとして売れないアイドル・石清水ルナをスカウトします。信夫を演じる和田正人さんの怪演は今回も炸裂しており、相変わらずイタいオタクのおじさんにしか見えません。

なりきり型のコスプレイヤーである優子は、衣装によって喋り方や性格を変えており、今回も荻野可鈴さんの好演が光っています。今回も、侍や警察官、水木一郎までもモチーフにした多彩なコスプレ衣装が登場し、いずれも見事に着こなしていました。

アキバレンジャーの指揮官的ポジションにあたる内田真礼さん演じる葉加瀬博世や、こずこずを含めた「ひみつきち」メンバーの掛け合いの安定感は素晴らしく、彼らのやり取りをずっと見ていたいと思わされます。

そして澤田汐音さん演じる石清水ルナは、表裏が無い天然ぶりが特徴的で、非常にクセが強い。回を追うごとにオタクとして成長するだけでなく、役者としての踏み台のために加入した彼女が、仲間の笑顔を取り戻すために奮闘する終盤には感動させられました。

前作同様、各話ゲストも見どころです。『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975-77)のOP曲を歌う堀江美都子さんをはじめ、公認戦隊のナレーションを務めた田中信夫さん、数々の公認戦隊で活躍するスーツアクターの岡本美登さんと高岩成二さん。こうした「中の人」が、本人役で登場します。

戦隊経験者は今作にも出演してますが、代役のキャラも多いです。特に関智一さんは、チャイナレッドやティラノレンジャー、ハリケンレッド、カブトライジャー、亀有アルパカなどを一人で演じており、後の『仮面ライダーゴースト』(2015-16)にも通ずる八面六臂の活躍をしていました。

この作品を語るうえで欠かせないのが、劇中に近い仕様を再現したハイターゲット向け玩具。今回もパワーアップ形態・超アキバレッドなどの「S.H.Figuarts」に加え、新武器「MMZ-02 ムニュムニュズバーーン」やマルシーナの変身アイテム「MMZ-00 モヤモヤズキューーン」が発売され、改めて商品展開への力の入れようが分かります。

このように各方面で2期ならではのボリュームアップが見受けられる中、お色気要素も増しています。シャワーシーン、ベッドシーン、不必要にセクシーな変身バンクにいたるまで、女性幹部・マルシーナを演じる穂花さんが身体を張っており、本作が大人向けであることを再認識させられました。

ディープな戦隊ネタへの特化

プロデューサーの日笠淳さんや、監督の田﨑竜太さんと鈴村展弘さん、といった経験豊富なスタッフ陣は概ね続投しています。ただし香村純子さんは『仮面ライダーウィザード』(2012-13)のため参加しておらず、荒川稔久さんが全話の脚本を執筆しました。

前作は公式の衣装や小道具、BGMや画像を使った戦隊ネタを詰め込んでいながら、戦隊に詳しくなくても楽しめる間口の広さがありました。それに対して今回は、劇中で扱われるネタがよりディープなものになっており、特に戦隊要素が色濃くなっているのが特徴的です。

ダイレンジャーの一件後も、別の作品の歴史が改竄されるタイムパラドックスが発生。それらは悪の組織「新次元頭脳改造地下真帝国バロスw」が、現実世界へ侵攻しやすくするために起こしていたものだった。現実世界の作品を守るため、アキバレンジャーはバロスwに立ち向かう。

『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992-93)をアメリカでリメイクし、のちにシリーズ化を果たす『Mighty Morphin Power Rangers』(1993-96)。第5話では、同作に相当する『Powerful Rangers』シリーズがアメリカ発のドラマであり、日本の公認戦隊がパクり扱いされてしまう。

続く第7話では、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002-03)の追加戦士「電光石火ゴウライジャー」が、ジャカンイエロー・テントライジャーとともに、架空の悪の戦隊「忍虫戦隊ジャカンジャー」に改変されてしまう。

作戦を遂行する怪人を生み出しているのが、堀川りょうさん演じるツー将軍。『科学戦隊ダイナマン』(1983-84)の敵であるカー将軍を敬愛し、常にコスプレ姿で日常を過ごす、信夫と同等の戦隊オタクです。怪人や悪の組織を偏愛しており、まさに悪側の信夫と言えます。

中盤までは、自身が作った怪人の作戦に巻き込まれるなど、間抜けなおじさんという印象を彼に抱きました。しかしながらアキバレンジャーの正体を知ってからは、ガチオタクならではの完璧な作戦を立て、あと一歩まで3人を追い詰めます。

ツー将軍の作る怪人は、『ダイレンジャー』のゴーマ怪人をモデルにしたブルーレイ係長や、『太陽戦隊サンバルカン』(1981-82)の機械生命体をモデルにしたスマホモンガーなど、「もし現代に公認戦隊の悪の組織が存在したら」的な妄想を具現化させていました。

デザインを担当したのは、前作でオタク文化を見事にデザインに落とし込んだ、さとうけいいちさん。今回の怪人は、歴代公認戦隊の敵をイメージした姿です。「実際には存在しないけれど、あり得るかもしれない」。そんな隙間を狙った見事な怪人たちでした。

このように細部まで凝った作風には、製作陣の戦隊への愛が多分に溢れています。エンディングには、毎回異なる公認戦隊のED曲や挿入歌を、今作のキャストがカバーした曲を使用しており、前作同様に遊び心が見受けられました。

しかしディープな戦隊ネタに特化したことで、世界観が多少狭くなったようにも感じられました。それに加え、権利関係が原因とはいえ、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975-77)と『ジャッカー電撃隊』(1977)、何より仮面ライダーシリーズに明らかに言及を避けている点には違和感を抱かざるを得ませんでした。

後味の悪い幕引き

前作のラスボスは、『アキバレンジャー』の路線変更を行ったのち、無理やり打ち切りにした原作者・八手三郎でした。その事実を忘れていた登場人物たちはマルシーナによって、自身が番組内のキャラであることも含めた全ての記憶を思い出す。

第1話の回想の時点で、既に彼女の手によって書き換えられていた。「あの日から運命(すべて)は伏線(つなが)っていた」のです。前作の描写を伏線として鮮やかに利用する脚本には舌を巻きました。そしてツー将軍を倒し、ステマ乙を復活させたマルシーナとの戦いが繰り広げられます。

そんな中、巨大ヒーロー・プリズムAが出現。その正体は、ニチアサ枠の新番組『非公認巨神プリズムA』の主人公。光線技で戦う宇宙から来た戦士といえば、否応にもウルトラマンを連想させますが、実際のデザインには『メガロマン』(1979)をはじめとした様々な特撮ヒーローの要素が取り入れられています。

この番組を企画したのは、外資系映像制作会社「チガウヨープロダクション」。八手からニチアサの放送枠を手に入れた同社は、アキバレンジャーの世界をプリズムAの世界にしてしまう。円谷プロと裁判で争ったチャイヨー・プロダクションに対する、明らかな皮肉でしょう。

『プリズムA』には、博世がハカセヒロヨとして続投。多少の設定を変更しての続投といえば、『アキバレンジャー』を下敷きにした『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021-22)と、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022-23)に連続出演した五色田介人を彷彿とさせ、不思議な縁を感じました。

チガウヨープロからニチアサ枠を守るために信夫は、公認戦隊恒例のVSシリーズを企画する。ツー将軍やマルシーナと協力し、なおかつ公認戦隊の力を使って巨大化したアキバレッドが、なんとかしてプリズムAを倒す。力業ながらもカタルシスがあるラストバトルでした。

しかし宇宙人の大艦隊が攻めてくる、という大規模な物語を企画したために、アキバレンジャーのみで特攻する展開になり、3人は亡くなってしまう。総集編の第13話では、「ひみつきち」内に遺影代わりに3人のフィギュアが飾られており、博世とこずこずが彼らのことを偲んでいた。

この総集編の演出は確かに上手く、感動的ではあります。しかし3人の死を決定的にしたのも事実です。2シーズンを通して、アキバレンジャーの面々には非常に愛着がありました。他の終わり方が出来たにもかかわらず、意図的にこの結末を選択した姿勢には疑問を抱くと同時に、とても後味の悪い幕引きだと個人的に思いました。

とは言いつつも、スーパー戦隊シリーズとそのファンに対するリスペクトに溢れている本作。「俺たちはああいう人たちの想いに支えられているんだ」。第8話での岡本さんの台詞にも表れているとおり、オタクの存在を肯定してくれる作品には違いありません。

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最後に

『シーズン痛』で完結したと言われているものの、続きが見たくなるのも頷ける楽しい作品。是非とも前作と一緒に観ていただきたいです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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