『コンフィデンスマンJP 英雄編』感想:クライムサスペンスに騙される

(C)2022「コンフィデンスマンJP」製作委員会

何も考えずに笑える、素晴らしいコメディ。

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作品情報

2018年に放送されたテレビドラマ『コンフィデンスマンJP』の劇場版3作目。地中海に浮かぶ世界遺産の島・マルタ島を舞台に、ダー子、ボクちゃん、リチャードが英雄の称号を賭けて騙し合う。過去作から続投するキャスト陣に加え、松重豊や瀬戸康史、城田優らがシリーズに初出演する。

出演: 長澤まさみ / 東出昌大 / 小手伸也 / 小日向文世 / 江口洋介 ほか
監督: 田中亮
脚本: 古沢良太
公開: 2022/01/14
上映時間: 127分

あらすじ

“英雄”と謳われた詐欺師〈三代目ツチノコ〉が死んだ。
その元で腕を磨いた過去を持つダー子、ボクちゃん、リチャード。
当代随一の腕を持つコンフィデンスマンによって密かに受け継がれる〈ツチノコ〉の称号をかけ、3人の真剣勝負がはじまる。
舞台は世界中のセレブが集まる世界遺産の都市〈マルタ島・ヴァレッタ〉。
狙うは、莫大な財を成し引退したスペイン人の元マフィアが所有する、幻の古代ギリシャ彫刻〈踊るビーナス〉。
それぞれの方法でオサカナに近づく3人だったが、そこに警察さらにはインターポールの捜査の手が迫っていた・・・。
果たして最後に笑うのは誰なのか!?
まったく先の読めない史上最大の騙し合いが始まる!!
そして、本当の〈英雄〉、最後の〈真実〉とは—!?

映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』公式サイトより引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

安心して観られるエンタメ

興行収入20億円を突破した『コンフィデンスマンJP』シリーズ最新作。ダー子、ボクちゃん、リチャードの信用詐欺師トリオが、財宝獲得のためにターゲット(=オサカナ)を嘘で翻弄するコメディです。

興収20億円突破!長澤まさみ「愛してるぜ~チュッ!」ファンに感謝|シネマトゥデイ
俳優の長澤まさみが10日、都内で行われた映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』(公開中)の大ヒット御礼舞台あいさつに登壇し、ファンに熱い気持ちをぶつけた。

『コンフィデンスマンJP』とは、2018年にフジテレビ月9枠で、全10回にわたり放送された連続ドラマ。美術や各話のゲストの豪華さを見ると、力の入り方が他のドラマと明らかに異なるのが伺えます。放送時に好評を集め、ギャラクシー賞2018年6月度月間賞を受賞しました。

このヒットを受けて製作された『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019)では、ドラマに出演したキャストが集結し、過去最大の騙し合いが展開されます。劇場版2作目となる『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(2020)は、緊急事態宣言解除後、新作映画が少ない中で公開され大ヒットとなりました。

共通して脚本を務めるのは、『リーガル・ハイ』(2012)や『エイプリルフールズ』(2015)を手掛ける古沢良太さん。『コンフィデンスマンJP』もこういった過去作と似たテイストのコメディなので、古沢さんの作風が好みであれば、ほぼ間違いなく楽しめると思われます。

コメディタッチのストーリーだけでなく、各話の中にテンプレート的な要素がいくつも盛り込まれている本シリーズ。偉人の名言の引用や、テレビの向こう側に語りかけるオープニング「コンフィデンスマンの世界へようこそ」、終盤のどんでん返し的な種明かし、などがあります。

上述したような物語の特徴がブレずに存在するからこそ、ファンは新作を安心して観られるのではないでしょうか。

中でもシリーズの醍醐味は、どんでん返し。伏線を張って回収する演出の巧みさというよりも、どんでん返しの仕掛けの大きさに重点が置かれています。作風のそういった部分は、好みが分かれそうな印象を受けました。

今回に関しても犯人捜しよりは、コンゲームの二転三転ぶりが魅力のように感じられました。正直シリーズを追っているファンの中には、序盤の時点でラスボスの正体を勘付く方もいるでしょう。

コメディタッチによって、シリアス展開がシリアスに見えないのも、好き嫌いが分かれそうなところ。どんなに主人公たちが苦境に追いやられても、「この後、どうせ逆転するだろう」と思えて、深刻に感じられないのです。

またシリーズものの特徴として、作品を経るごとに登場人物がどんどん増えていきます。過去作で既に登場したキャラに関して、本作で説明はされませんが、雰囲気でこういう人かなと推測することはできます。

しかしながら今作だけではキャラ同士の関係性を100%読み取れず、一見さんお断り感があるのは否めません。加えて前回までのネタバレがされた状態で物語が始まるため、過去作を予習してから最新作を観るのを推奨します。

クライムサスペンス色の強い第3作

これまでトリオとして一緒に行動してきたダー子、ボクちゃん、リチャードが、『~英雄編』では一つのターゲットのために争い合います。

ツチノコ・ダー子・ボクちゃん・リチャード・狼たち・英雄、といったように章分けされている今作。章ごとに視点が他の人物に移るため、それに伴い少しずつコンゲームの真相が明かされていく、多層構造となっています。

1作目は「恋人」、2作目は「親子」にフォーカスしているとするならば、3作目では「師弟」が描かれます。師と仰ぐ三代目ツチノコが亡くなって2年、やる気を失っていた3人。そこでダー子は、勝者は敗者の言う事を聞かせられるゲームを2人に提案する。

マルタ島のヴァレッタを舞台に、一週間のコンゲームが始まる。前2作の劇場版と同じく、海外の観光都市が舞台なので、美しい景色が堪能できます。時節柄、実際のロケ地は国内でありながら、ちゃんと現地で撮影しているっぽく見えるのが凄い。

ダー子の獲物は、元マフィアのジェラール・ゴンザレスと妻・畠山麗奈が保有する、幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス像」。五十嵐とともに海上自衛官と政府官僚に扮し、2人に接触する彼女。しかし翌日、インターポール捜査官のマルセル真梨邑や、日本から丹波刑事が訪ねてきて一触即発の空気になる。

五十嵐を味方に引き入れていたボクちゃんは、踊るビーナス像の情報をキャッチし、ダー子よりも先に美術商として夫妻に接触。出身や兄妹の共通点を利用して、麗奈と仲良くなる。

麗奈とボクちゃんは、買い物の途中に「四代目ツチノコ」を名乗る男に誘拐されてしまう。その男はリチャードだったことが明らかに。リチャードはビジネスパートナーである韮山波子とともに、誘拐を計画、実行するのだった。

中盤までの「警察&インターポールvs詐欺師」の構図が緊迫感を高めており、過去のエピソードと比べて、クライムサスペンス要素が強めな印象を与えます。

劇中の一年前にフランスで発生した、少年誘拐事件が冒頭に映し出されます。FPS視点で撮られた映像を取り入れており、特にハラハラが演出されているシーンでした。この事件を首謀し、物語のラスボスとなる悪役が、明確に存在するあたりもクライムサスペンス感を強めています。

ダー子はルパンになるのか

インターポールに追われるダー子、ボクちゃん、リチャード。その末にボクちゃんは、踊るビーナス像を真梨邑に渡す。捕えられた3人の身柄はインターポールに渡されると思いきや、突然やってきた日本大使館のもとへ。ここから驚異の逆転劇が始まる。

真のオサカナは真梨邑だった。彼はダー子と子猫ちゃんたちが仕掛けた壮大な罠にはまったのだ。大使館の大使たちや、ゴンザレス夫妻、丹波刑事さえも、初めからみんな協力者だった。序盤から隠されていた正体がテンポよく明かされていくさまは、とても爽快でした。

特筆すべきは、真梨邑を演じる瀬戸康史さんの負け演技です。バカンスを楽しんでいる最中、ゴンザレスからのメールを読んで焦る真梨邑。空っぽになった盗品倉庫を見て、喚き、のたうち回る。全身を使った狂乱の演技は、この映画の白眉です。

本作の製作前には、前2作の劇場版に出演されていた三浦春馬さんと竹内結子さんが亡くなられました。劇中には2人が演じるジェシーとスタアが、ダー子に力を貸しているのが分かるカットがあります。ジェシーとスタアが、この世界では元気に生きていると感じられ、嬉しい演出でした。

ゲストキャストである城田優さんは三浦さんの親友として知られています。また生田絵梨花さんとは舞台『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』(2020)で共演されていました。ゆかりのある俳優陣がキャスティングされている点にも、製作側の計らいが見受けられます。

『コンフィデンスマンJP』の笑いで特徴的なのが、時事ネタや俳優の「中の人」ネタ。今回のエンドクレジットには、鳥獣戯画モチーフの2.5次元舞台が登場します。『キャッツ』と『ライオン・キング』を混ぜたようなチープな舞台に、ミュージカル俳優コンビをあてがうさまは面白く、必見です。

前作『~プリンセス編』では、ダー子たちがオケラのまま話を終わらせるといった、捻った結末を迎えました。今作では、宿敵である赤星栄介を味方につけるという、別の捻りが物語内に加えられており、舌を巻く展開でした。

第1話「ゴッドファーザー編」に登場した経済ヤクザ、赤星。事あるごとにダー子たちに騙されており、3人への復讐に日々燃えています。彼女にとっては好敵手的な存在となっており、「運命の人」と称されています。

本作で赤星は彼女に力を貸し、真梨邑によって屈辱を受けたのを機に、大使館大使に変装します。共通の敵に対して協力する二人の関係性は、『ルパン三世』のルパンと銭形のような、敵とも味方とも異なる関係性に描かれていました。

『コンフィデンスマンJP』の特徴が最大限に引き出された劇場版3作目。とはいえ、一話完結型映画のシリーズ化の難しさを実感する点もありました。

ストーリーが一話ごとにリセットされるため、主人公を過度に成長させることができません。なので話の内容は、どうしても似てしまいがち。これはマンネリを生みかねないため、映画のシリーズ化とは、相性が悪い気がします。もしかしたら製作陣は寅さんや、それこそルパンみたいな長期化を狙っているのかもしれません。

今作の顛末に関しても、次回作を作ることができる余白が残されています。面白い作品を作り続けるのが低いハードルではないのは承知ですが、長期シリーズ化を期待して、次回作を待とうと思います。

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最後に

2023年の大河ドラマ『どうする家康』で多忙と思われる古沢さん。次回作は作られるとしても当分先でしょうね。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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