『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』感想:真に終結した恋愛頭脳戦

(C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

この映画で完結と言われても不思議じゃない。

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作品情報

2019年に開始したアニメ『かぐや様は告らせたい』シリーズ初の劇場用作品。『週刊ヤングジャンプ』に連載された人気漫画を原作とし、第3期で描かれた文化祭後のエピソードをテレビ放送に先駆けて特別上映する。A-1 Picturesが制作を手掛け、シリーズおなじみのキャストが集結した。

原作: 赤坂アカ
出演: 古賀葵 / 古川慎 / 小原好美 / 鈴木崚汰 / 富田美憂 ほか
監督: 畠山守
シリーズ構成: 中西やすひろ
公開: 2022/12/17
上映時間: 90分

あらすじ

秀知院学園の生徒会で出会った
副会長・四宮かぐやと生徒会長・白銀御行。
2人の天才は長きにわたる恋愛頭脳戦の末、
お互いの気持ちを伝え合い、“奉心祭”で初めてのキスをした。
しかし未だ明確な告白には至っておらず、
恋人同士になるかと思われた2人の関係性は曖昧なまま、
お互いをより強く意識して、クリスマスを迎えることに。
“完璧でありたい”白銀と、
“完璧じゃない”所こそを求めるかぐや。
これは天才たちによる、いたって“普通な”恋の物語。
ファーストキッスは終わらない。

「かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-」公式サイトより引用
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レビュー

このレビューは『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』をはじめとした、漫画およびアニメ『かぐや様は告らせたい』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

ギャグとシリアスのバランス

2015年に『ミラクルジャンプ』で月刊連載を開始した『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』。翌年からは『週刊ヤングジャンプ』に掲載誌を移し、2022年11月に連載を完結したばかり。全28巻発売されている単行本の累計発行部数は、2200万部を超えています。

かぐや様は告らせたい:全世界累計2200万部突破 最終28巻発売 ラスト公式ファンブックに桂正和、矢吹健太朗ら豪華作家陣 - MANTANWEB(まんたんウェブ)
 赤坂アカさんの人気ラブコメディーマンガ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」のコミックスの全世界のシリーズ累計発行部数が、2200万部を突破したことが分かった。コミック…

舞台は、エリートが集う名門校「秀知院学園」。巨大財閥の令嬢にして生徒会副会長の四宮かぐやと、並外れた努力で学年成績1位を維持する生徒会長の白銀御行が、相手に告白させるために頭脳戦を繰り広げます。

作品の特長は何といっても、魅力的な登場人物たち。かぐやの言動は性格悪く見えかねませんが、抜けている一面や一途な性格も描いているため、多面的なキャラになっています。主要人物全員が立体的に造形されており、女性キャラだけでなく男性キャラも人気があるのも頷けます。

彼らが真面目にバカをやっているのが読んでいて楽しいです。というのも会話のテンポが良く、間に挟まるギャグが面白い。個人的に好きなのは、試験前に各キャラの建前と本音が露呈する回。言葉選びやテンポが素晴らしいだけでなく、中間と期末でその件を繰り返すことで、キャラの成長にも繋げる話運びが巧みでした。

生徒会に属する高校生の日常を描くこの作品は、生徒会漫画と言えます。『生徒会役員共』など他の漫画と明らかに異なるのが、ラブストーリーである点。主人公二人の「お可愛い」ピュアすぎる恋の駆け引きに惹かれます。このキュン要素と笑いのバランスが絶妙なのです。

2019年のアニメ化によって、作品の人気は加速します。古賀葵さんをはじめとした、メインキャスト全員が本当にハマり役。彼らの好演に加えて、青山穣さんの特徴的なナレーションも相まって、コメディ的な面白さが何倍にも増大しています。

アニメならではの演出として、『ラブストーリーは突然に』に似た「テケテーン」というBGMが要所要所で使われています。ギャグ展開とラブストーリー展開の両方で使われており、作品の二面性を端的に表現していました。

2020年4月には、第2期『かぐや様は告らせたい?〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』がスタート。タイトルのクエスチョンマークと打ち消し線にも表れているように、物語が進むうちに「恋愛頭脳戦」展開は減っていきます。

当時驚いたのが、緊急事態宣言発令につき放送を延期するアニメが相次いだ中、延期せずに最終話を迎えたこと。コロナウイルスの流行が本格化していない同年2月~3月頭に、アフレコを終えていたからだと思われます。A-1 Picturesのスケジューリングの凄さを実感しました(※1)。

※1:2020/6/27配信『【かぐやDAY】特別番組「かぐや様の部屋」#1』参照

2022年4月から放送された第3期『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』では、文化祭「奉心祭」の話が終盤で描かれます。お見舞いや花火大会、誕生日などのイベントを経ても、そこまで変わらなかったかぐやと白銀の関係性が、大きく進展する転換点でした。

原作への愛とリスペクト

テレビシリーズは基本的に3つのパートで1話が構成されており、1パートが漫画1話分にあたります。台詞の一つ一つまで出来るだけ原作に沿っており、アニメオリジナルのパートは一切ありません。単行本の隙間ページにある挿絵にいたるまで、忠実に映像化しています。

とはいえエピソードの取捨選択や、時系列のシャッフルは頻繁に行われています。漫画にある「白銀御行は告らせたい①」は、アニメでは省略されましたが、②以降はそのままのナンバリングでアニメ化されていました。製作陣の原作に対するリスペクトが表れているように思われます。

「白銀御行は告らせたい①」をはじめとした、いくつかの未映像化回はオーディオドラマとしてSpotifyで配信中。また第3期を発表したティザーPVにまで、原作のエピソード「石上優は語りたい」が使用されました。一つ一つの回を大切に扱う姿勢からは、原作への愛が伺えます。

今作の舞台は奉心祭終了直後(12月20日)から、クリスマスを挟み、12月27日までの約一週間です。第3期のラストから地続きであり、キャラクター紹介のような描写もありません。そのため一見さんではなく、シリーズのファンに向けて製作された映画なのは明らかです。

メインストーリーは、原作第138~151話の流れに沿っています。そこから連載当時ならではのギャグがカットされたほか、台詞や描写が少し省略されているので、単行本で読んだときより多少テンポアップしている印象を受けました。

生徒会会計・石上優から白銀への電話から、映画は始まります。いかがわしい内容の電話の後、畳み掛けるように、かぐやと近侍・早坂愛による過激ワード連呼のやり取りに移ります。「大人のキス」から行為までの期間を知って、かぐやが唖然とした瞬間は、劇場で最も笑いが漏れていました。

このようにギャグ多めで幕を開けつつも、かぐやの性格が「氷かぐや」に変化するとシリアスさを増していく本作。「大人のキス」よって再び拗れたかぐやと白銀の物語ですが、本作では両者の内面の葛藤に焦点が当たっていきます。

一本の映画にまとめた意義

今作は「特別上映」と銘打たれています。理由としては、後にテレビ放送が予定されているからでしょう。ただし現段階では、具体的な放送形式や日程は発表されていません。

感情の変化について描いた比較的地味なストーリーなので、数話に分けて放送すると冗長になってしまうかもしれない。そうした可能性を危惧して、もしかしたら一本の映画にまとめたのかもしれません。

映画本編ではテレビシリーズ同様に、アイキャッチ的なカットがたびたび挟まります。それによって話のテンポが、そのたびにリセットされる感覚はありました。なので映画というよりは、テレビアニメを観ている気分でした。

しかしながら、このエピソードを一本の映画として上映した意義はあるように感じました。劇中で「最後の恋愛頭脳戦」と言われているとおり、ラストでかぐやと白銀は正式に交際を始めます。そのため作品的な位置づけは、『映画 五等分の花嫁』(2022)とかなり似ています。

石上などサブキャラのストーリーを大胆に省いた本作では、クリスマス後のデートでかぐやが告白するまでの流れが整理されています。

他人を頼らず、感情を表に出さずに生きてきたかぐやは、他人を傷つけないため自ら距離をとっていた。白銀に近づきたくなった彼女は、自身の醜い部分を隠そうとする。しかし氷かぐやとの対峙を経て、好きな人には隠し事をせず、全てを分かち合いたいと思うようになった。

その一方、勉強以外は不器用な白銀はかぐやに対して劣等感を抱いており、彼女の横に立つため「自分とは違う自分」を作り上げる。常に虚勢を張っていた彼は、好きな人だからこそ自身の弱い部分を曝け出すことに怯えていた。

相手に告白させるためにペルソナを磨き続けてきた両者が、自分の殻を破って他人と向き合う。クライマックスで仮面を外した二人は、ようやく本音で話し合うことができた。

そして原作第159~160話にあたるクリスマス後のデートが、エピローグでサラッと描かれます。弱い部分を見せ合ったからこそ、「告らせたい」と思っていたかぐやが告白するにいたった、という流れが分かりやすくなっています。それと同時に、かぐやと白銀の物語がある意味で完結を迎えました。

先述したように、二人以外の話は詳細には語られません。物語終盤でカラオケやホテル、空港といった場所が映し出され、各々のクリスマスの過ごし方が示唆される程度でした。ただしおなじみのキャラクターの総登場は、シリーズの集大成のような雰囲気があって良かったです。

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最後に

一本の映画としてまとまっているので、テレビ放送を待たずに劇場で観ても損はないと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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