『ルパン三世 ルパンVS複製人間』感想:時代を先駆けたクラシック

原作:モンキー・パンチ (C)TMS

たまに金曜ロードショーでやっているルパンの映画。

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作品情報

モンキー・パンチ原作のテレビアニメ『ルパン三世』シリーズ初の劇場用作品。神を自称する男・マモーとルパン一味が、賢者の石を巡って戦う。山田康雄、増山江威子、小林清志らシリーズお馴染みのキャストが声を当てる。1978年の公開時のタイトルは『ルパン三世』。

原作: モンキー・パンチ
出演: 山田康雄 / 増山江威子 / 小林清志 / 井上真樹夫 / 納谷悟朗 ほか
監督: 吉川惣司
脚本: 大和屋竺 / 吉川惣司
公開: 1978/12/16
上映時間: 102分

あらすじ

ルパンが処刑された。だがそれを信じようとしない男・銭形警部がルパンの埋葬されたドラキュラ城を訪れると、死んだはずのルパンが現れる。喜ぶ銭形をよそに颯爽と去ったルパンは、エジプトのピラミッドに眠る”賢者の石”を盗み出し不二子のもとへ向かうがまたも裏切られ……。幾度となく不二子に騙されるルパンに愛想を尽かし去っていく次元&五ェ門。直後、ルパンは賢者の石がニセモノだと知った不二子の依頼人・マモーによって捕らえられ、カリブ海の奇妙な孤島へと運ばれてしまう。

【本編プレビュー】ルパン三世 ルパンVS複製人間 |”LUPIN THE 3RD: THE SECRET OF MAMO”(1978) – YouTubeより引用
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レビュー

このレビューは作品のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

複製人間とカリオストロ

名怪盗アルセーヌ・ルパンの孫にして、狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大泥棒、ルパン三世。いまやその名前を知らない人はいないと言ってもいいほど、有名になったキャラクターです。誕生から半世紀を経てもその人気は色あせず、イタリアをはじめ世界でもファンを獲得しています。

1967年から『漫画アクション』に連載された同名漫画で初登場。1971年にはテレビアニメが放送開始。半年間の放送の終了後も再放送が繰り返された結果、人気が高まり、1977年からテレビアニメ第2期が開始。

盗みや発砲などモラルに反する行為を平気で行う主人公にもかかわらず、多くの人に好かれているのはルパンの陽気さや、アクションを絡めたストーリーの面白さにあると思います。

ルパンの相棒であり拳銃の名手・次元大介、最強の剣客・十三代目 石川五ェ門、ルパンを魅惑する稀代の女怪盗・峰不二子、ルパン逮捕に命を懸ける警部・銭形幸一、といった個性的な取り巻きたちも、一人ひとりが非常に魅力的です。

第2期はコメディ要素をより強くし、対象年齢を下げたことで、より幅広い層での人気を獲得しました。本作『ルパンVS複製人間』は、その最中に公開された劇場用作品1作目。

監督を務めるのは、テレビシリーズ第1期で絵コンテを担当した経験を持つ吉川惣司さん。今作は当時放送中だった第2期の明るいストーリーは対照的に、全編でダークな物語が展開されます。

理由としては、第2期が「あまりにお茶の間向けの(子供っぽい)演出で、スタッフの間に不満が高まって」おり、「劇場版はもっとアダルトな内容にしようという機運が高まっていた。マモーとルパンの対立があるが、米国とソ連の対立構造の前ではかなわない、という物語がやりたかった」と後に監督は語ります(※1)。

※1:映画「ルパン三世 ルパンVS複製人間」 最新技術でよみがえる39年前の傑作 監督だけは「今さらほめられても…」(2/4ページ) – 産経ニュースより引用

観客のターゲットは成人した大人を想定しており、それもあってかヌードや性描写も登場します。しかしながら実際に映画を観にきた多くの観客は、テレビ放送を見ていた中高生たちでした。

この反省を踏まえて次作となる劇場版2作目では、ティーン世代に向けた物語にシフトしました。これが『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)です。宮崎駿監督の映画初監督作でもあるこの作品は、2021年の現在にいたるまで、アニメーション映画のクラシックとして語り継がれています。

『カリオストロの城』が有名になりすぎたがゆえに、宮崎監督が描いたルパンが、ルパンのパブリックイメージとして広く認知されました。損得で物事を判断せず、クラリスを助ける一心で行動する。

どちらが良いとか悪いとかではありませんが、これは原作者であるモンキー・パンチ先生の生み出したルパンとは異なり、かなり優しい性格になっています。本作で描かれるのは、そういった一般的なルパン像とは少し外れて、露悪的な一面をのぞかせています。

劇場版ならではのスケール感

さて『ルパンVS複製人間』に話を戻します。テレビシリーズとは一線を画す、ビッグスケールなストーリーが特徴的な本作。ルパン三世の処刑という衝撃的なカットから幕を開けます。実際は死んでいなかった本物のルパンが、永遠の生命を司る「賢者の石」を盗むところから物語はスタート。

ルパンたちの前に立ちはだかるのが、謎に包まれた人物・マモー。彼も同じく賢者の石を狙っており、奪取のために手下たちを差し向けます。

その正体は、クローン技術を擁している研究者でした。彼の技術によって作り出された、ヒトラーやナポレオンをはじめとした歴史上の人物の複製が、コレクションとして広大なアジトの中に展示されています。オープニングで映し出された不穏な映像は、このクローンの制作過程だったのです。

マモー自身も、一万年も前から自分のコピーを生み出し続けることで、生き永らえる複製人間でした。しかし度重なるコピーが原因で、徐々に遺伝子に劣化が生じており、永遠には生きられないため賢者の石を欲していました。

不老不死やクローンといった、いかにもSFらしい重厚なテーマが素晴らしい。さらにクローンをテーマにした創作物は数あれど、コピーによる遺伝子の劣化を扱っているのは珍しいのではないでしょうか。最終的には舞台が宇宙空間にまで移動するな、スケールの大きさも感じさせます。

この作品はアニメーションとしても、注目すべきポイントがあります。製作費に5億円をかけているのもあり、絵に圧倒されます。マモーのアジトの電脳的なデザインや、巨大な脳髄が画面いっぱいに映される終盤のカットなど、一枚の絵に対する描き込みの量や、そこから生じる迫力にはただただ圧巻です。

また声優の方々の演技は素晴らしい。特に劇場版オリジナルキャラのマモーは、ドラマ『水戸黄門』の2代目水戸光圀役としても知られる西村晃さんが演じており、その特徴的な声が彼の異質さや不気味さを強調しています。

今作は公開から40年以上経っており、現代からみればコンプライアンス的にアウトな描写はところどころに見受けられます。「精神病院でもなければ」や「白痴の」といった、今日では不適切とされるワードが平然と使われています。時代ですね。

加えて不二子のヌード姿を描いているのも、現在の表現規制の厳しさからは考えられない部分です。これらの表現は『金曜ロードショー』など地上波で放送される際は、真っ先にカットされる箇所に挙げられます。そのため当時の空気感そのままに鑑賞するには、配信やソフトで観るしかありません。

神と人間の対立

今作について語るうえで特筆すべきは、マモーという魅力的な悪役にほかなりません。映画『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)に出てくるスワンという敵キャラをモデルに造形されました。

スワンと同様に、その見た目のインパクトが強い。後の『AKIRA』(1988)に登場するナンバーズたちにどこか似ている印象を受けました。その個性的な声も相まって、普通の人間とは思えないような不気味さをしっかり感じさせられます。

マモーは自身のクローンを作り、育てることで、半永久的に生き延びられます。世界の富の三分の一を支配する富を保有する大富豪でもあります。それらを利用し、影から歴史への干渉をしてきました。彼に不可能はありませんでした。ただ一つ、不老不死を除いて。

不死を実現できると思っていた賢者の石。それを用いても不死を得られないと知った彼は、悲しみに溢れていました。自らを神と名乗りつつも、実際は、誰よりも「生」にすがっていたことが分かります。彼は実に人間らしさ溢れる人物と言えます。

一方で「ルパンは夢を見ない」という印象強い台詞にもあるように、ルパンは究極的な現実主義者。神を自称するマモーを頑なに否定し、彼の理屈やトリックの裏に何があるか考え続けます。

そして彼は生きることに決して固執していません。盗みや不二子との色恋を何より楽しんでいます。「今を楽しむ」生き方をしており、享楽的な考え方を持っていると言えます。

お互いに自分こそが正しいと信じる二人。だからこそマモーはルパンの正体を暴くために彼の心を覗き、対するルパンは「自身もクローンなのではないか」という疑いを晴らそうとマモーのアジトに乗り込みます。

不老不死を望むマモーと、刹那的な生き方を好むルパン。二人の対照的な生き様が、クライマックスの対決に表れています。エンディングに流れる『ルパン音頭』の陽気さは、ルパンのように人生を楽しむことの大切さを象徴しているようです。

ルパンというキャラの根幹にあるものは何なのか、なぜここまで優れた泥棒なのか、その答えに迫った作品にもなっています。公開から時間が経ってからじわじわと評価が上がったのも納得のメッセージ性の高さです。

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最後に

長寿シリーズの記念すべき劇場版第1作。40年以上前でも高度な映像技術と、時代を先取りしたテーマ性を含んだストーリーは必見です。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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